タイトル |
豚胚の凍結保存方法の検討及び移植試験 |
担当機関 |
神奈川畜研 |
研究期間 |
2000~2001 |
研究担当者 |
橋村慎二
青木稔
仲沢慶紀
田中嘉州
峰崎洋通
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発行年度 |
2001 |
要約 |
豚胚のガラス化融解後の生存性向上を図るため、新たにガラス化前後の培養液にβME199を用いて、推定-135℃でガラス化し、40℃で融解、6StepでEG除去したところ、79.5%と良好な生存率を得た。この方法でガラス化融解した胚を移植した結果、1頭が受胎して8頭の生存子豚を得た。
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キーワード |
豚胚、ガラス化保存
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背景・ねらい |
ガラス化保存した豚胚移植による受胎・分娩例は未だ少なく、その手法については改良の必要性がある。本試験は融解後の胚の生存性向上と移植による受胎・分娩を目指して、ガラス化前後の培養液、ガラス化温度、融解温度、凍結保護物質の除去方法を検討した。
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成果の内容・特徴 |
- 妊娠6日目の供胚豚から外科的に採取した拡張胚盤胞~脱殻胚盤胞を用いて、愛知県の小林らの方法に従い、2Mエチレングリコール(EG)液中で5分間平衡した後、0.25mlプラスチックストロー内のガラス化溶液(8MEG+7%ポリビニールピロリドン液) 層に移してからガラス化保存した。
- ガラス化前後の胚の培養には、mCZB及び新たに抗脂肪酸化作用のある0.1mMβメルカプトエタノールと10%牛胎仔血清を添加したTCM199(βME199)を用いた。
- ガラス化は、ストローを液体窒素(-196℃)に直接浸ける方法及び新たにストロー暴発防止と凍結時のフラクチャー傷害防止を図るために液体窒素蒸気中(液面から1cmの発泡スチロール上、推定-135℃)で3分間保持する方法で行った。
- 胚の融解は、室温(20~25℃)で5秒間保持してから25℃温水中で10秒間浸す方法及び 新たに融解速度を速めて融解後の生存性を向上させるため、室温5秒間保持後、40℃の温 水中で5~6秒間浸す方法で行った。
- EGの除去はストロー内でガラス化溶液と1.7Mガラクトース液と混和した(第1段階 希釈)後、1M、0.5M、0MのEG液(PBS)に2分間ずつ感作させる4Step法及 び新たにEG除去をより促す目的で第1段階希釈後、1M、0.5M、0.25M、0.125M、0 MのEG液に3分間ずつ感作させる6Step法で行った。
- 融解後24時間の胚生存率は、培養液にmCZBを用い、-196℃でガラス化、25℃で融解、4StepでEG除去した方法(対照)で43.5%であった。一方、新たに培養液にβME199を用い、推定-135℃でガラス化、40℃で融解、6StepでEG除去した方法では79.5%と対照より有意に高かった。(表1)
- 対照の方法でガラス化融解した胚19.3±0.6個を受胚豚3頭に、35.0±2.8個を2頭に移 植したが受胎しなかった。一方、新たな方法でガラス化融解した胚39.0±5.7個を受胚豚2頭に移植したところ、1頭が受胎に至り8頭の生存子豚を分娩した。(表2)
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成果の活用面・留意点 |
- 培養液、ガラス化温度、融解温度、凍結保護物質の除去方法について、新たな手法を 組み合わせて豚胚をガラス化融解することにより、融解後24時間の胚生存率を改善し、受胎分娩例を得ることができた。本試験では、どの項目が有効なのか不明のため、今後 明らかにする必要がある。
- 48時間後の胚生存率は供胚豚による個体差が大きく、新たな手法を用いてもこの個体 差を改善するには至らなかった。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
豚
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