タイトル |
機械深耕と堆肥の局所施用を組み合わせた日本なし「幸水」の樹勢回復技術 |
担当機関 |
埼玉県農総研セ |
研究期間 |
1998~2002 |
研究担当者 |
浅野聖子
島田智人
六本木和夫
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発行年度 |
2001 |
要約 |
高樹齢化した日本なし「幸水」に対し、ホールディガーおよびコイル式深耕機を用いて深耕を行い、堆肥を土壌中層に局所施用することは、細根を大量に発生させ、果実の肥大効果が認められ、樹勢回復、多収生産のための土壌管理技術として有効である。
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キーワード |
日本なし「幸水」、堆肥、局所施用、細根、樹勢回復、土壌管理
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背景・ねらい |
「幸水」は高樹齢化に伴い、収量が漸減している。その原因の一つとして有機物施用等の土壌管理の問題点が指摘されている。そこで、土壌の改善対策の一つとして、簡易な土壌改良機を用いて中層への堆肥施用を行い、根量増加による樹勢回復および果実肥大等の効果を明らかにし、多収生産のための土壌管理技術を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- 高樹齢化した25年生「幸水」に対して、ホールディガー、コイル式深耕機を用いて樹幹の周囲(樹幹から1.5~2mの距離)に放射状に直径30cm深さ40~50cmの穴を1樹当たり8か所2年連続で計16か所掘り、1穴当たり20~25リットルの牛糞稲わら籾殻堆肥を局所施用することにより、果実重の増加による多収効果が認められ、予備枝先端から発生した新梢の生育が良好になる傾向も見られた。また、糖度、果肉硬度への影響は認められなかった(表1)。
- 堆肥を局所施用した箇所の1年後の根の形態を調査したところ、局所施用区の根長は慣行区の約2.5倍になり、中でも根量全体に占める根径0.5mm以下の細根の割合が高くなった。処理2年後においても、根径0.5mm以下の根の増加が認められ、細根量の多い状態が維持されていた(図1)。
- 10年生「幸水」に対してホールディガーにより開けた穴に堆肥を局所施用した区と、そのまま土を埋め戻した区および無処理区の1年および2年後の根の状態を調査したところ、堆肥局所施用区では無処理区に比べて細根量が増加するのに対し、埋め戻し区では細根の割合が無処理区より若干増加するものの、根量自体の増加は見られなかった。このことから、深耕による断根のみでは根の更新にはつながるが、根量を増加させる効果は少なく、堆肥を根域に局所施用することにより、活性の高い細根を大量に発生させることができると判断される(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- ホールディガーはトラクターのアタッチメントとして装着でき、性能も優れ実用的であるが、礫含量の多い土壌条件では不適である。コイル式深耕機は、砂含量の多い土壌条件では不適であるが、礫の多い土壌においても使用することができ、土壌条件にあわせて機械を選定する必要がある。
- ホールディガーで穴を開ける際は樹の周りを円状に作業するよりも、樹の両側を直線的に進みながら作業した方が効率が良く実用的である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
樹勢回復
土壌改良
土壌管理技術
日本なし
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