タイトル |
温暖地早期栽培地域における水稲の黒色紙マルチ移植栽培法 |
担当機関 |
千葉農総研 |
研究期間 |
1998~2002 |
研究担当者 |
在原克之
篠田正彦
小山 豊
櫻井富久
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発行年度 |
2001 |
要約 |
黒色紙マルチを使用した紙マルチ移植栽培により、初期生育の安定化と多年生雑草に対する防除効果が向上し、除草剤(農薬)を使用しない、環境にやさしい稲作が可能となる。さらに、秋期防除との組み合わせで、一年生雑草だけでなく多年生雑草まで含めた継続的な防除が可能である。
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キーワード |
紙マルチ移植栽培、水稲、雑草防除、環境保全、減農薬、早期栽培
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背景・ねらい |
本県は早期栽培地域のため多年生雑草の発生が多い。また、移植時の気温が低く、初期生育の確保が重要である。このような本県の水稲栽培において、除草剤(農薬)を使用しない、環境にやさしい雑草防除技術である紙マルチ移植栽培法を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- 紙マルチ移植栽培では、移植60日後の雑草発生量に関して、一年生雑草に対しては慣行除草剤並みに抑えることができる。多年生雑草に対しては、黒色紙マルチを使用することでほぼ慣行除草剤並みの防除効果が期待できるが、白色紙マルチの使用では防除効果が劣る(表1)。
- 紙マルチは移植後45~50日で崩壊・消失する。発生期間の長い多年生雑草はこの後にも発生してくるため、雑草防除効果の高い黒色紙マルチを使用してもやや残草が見られる。したがって、刈り取り後ロータリ耕などによる耕種的防除を行うと、雑草防除効果が高まる(図1)。
- 水稲の茎数は、慣行(無マルチ)に比べて白色紙マルチの使用では生育初期には少ないが、黒色紙マルチを使用するとやや多く推移する。また、紙マルチ栽培の精玄米収量は、慣行並かそれ以上である(表2)。
- 地表下3cmの地温の日変化は日照量と関係し、日照の多い日は日変化の幅が大きくなる(図2)。最高地温に差がみられ、慣行(無マルチ)に比べて黒色紙マルチの使用で高く、白色紙マルチの使用で低く推移する。
- 以上のことから、地温が上昇しやすい黒色紙マルチを使用した紙マルチ栽培は初期生育を確保するのに有利である。また、黒色紙マルチの使用と耕種的防除の組み合わせにより、一年生雑草だけでなく多年生雑草まで含めた除草剤を使用しない継続的な雑草防除が可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- 紙マルチの敷設にあたっては、風速が7m/sを超えると作業が困難になるので注意する。
- 紙マルチを田面と密着させることで雑草防除効果が安定するので、移植時とそれ以降の水管理には十分注意する。具体的には、移植時の水深はヒタヒタ水程度とし、移植後半日程度そのまま落水して、紙マルチの田面への定着を図る。その後2週間くらいは浅水で管理し、紙マルチが浮き上がらないように注意する。
- 雑草発生量の多いほ場では、植え穴や紙の合わせ目から雑草の発生することがある。翌年の雑草発生量を増やさないためには、紙マルチ崩壊・消失後にノビエなどの手取り除草を行う必要がある。
- 黒色紙マルチは約2万円/10a、専用田植機は通常の1.5倍の約300万円である。慣行栽培よりも生産費が増加するため、生産物の付加価値化などの販売戦略が必要となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
雑草
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農薬
防除
水管理
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