タイトル |
サンダーソニア球根養成栽培技術の経済的評価 |
担当機関 |
千葉県農総研 |
研究期間 |
1996~2000 |
研究担当者 |
溝田俊之
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発行年度 |
2001 |
要約 |
サンダーソニアの切花栽培においては、切花後の掘り取り球根の歩留りより養成の歩留りが重要で、後者が低水準になると、球根数を確保するために球根購入費用が増加し、経営が悪化する。したがって球根養成技術に問題がある経営では球根養成技術の改善によって経営改善が可能である。
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キーワード |
サンダーソニア、球根養成、経済的評価、多段階線形計画法、XLP
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背景・ねらい |
千葉県では1995年頃からサンダーソニア切花の生産が急増したが、その球根はもっぱらニュージーランドからの輸入に頼っており、しかもその単価は高い。そのため生産者の中には、切下球(新塊茎)を掘り上げて、養成栽培を行い種苗費を低下させようとするものも増えてきた。しかし養成栽培技術の良否によって経営成果の格差が生じるため、球根養成技術の経営経済的評価が必要である。
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成果の内容・特徴 |
- 切花栽培と球根養成栽培の流れは図1に示すとおりであるが、全体を通した球根数量の消長を捉えた資料が存在しないため、図1注に定義する「切下歩留り」「養成歩留り」の水準を変動(図2注)させながら多段階線形計画法を適用し、その結果を検討することで球根養成が経営全体に及ぼす影響を捉えた。なお、計算期間は10年とした。
モデルは施設面積1650m2、露地畑面積123a、労働時間100hr/旬/人×3人で、選択可能な生産プロセスは、施設におけるキンギョソウ2作型、サンダーソニア抑制および促成各3作型、露地畑におけるサンダーソニア養成栽培、スイカおよびニンジンとした。 - 歩留りと1年あたり農業所得との関係を図2に示した。養成歩留りの低下に伴う傾斜は切下歩留りのそれに比べて急で、養成技術が所得に及ぼす影響が大きいことがわかる。養成歩留り、切下歩留りともに1の場合の1年あたり所得は1,198万円であるが、切下歩留りのみ0の場合は819万円、養成歩留りのみ0の場合は570万円である。
- 表1は、切下歩留り一定(0.7)の下で、養成歩留りを1から0まで変化させたときの最適解における10年間のプロセス純収益合計及び農業所得を示している。養成歩留りの低下に伴い比較有利性が低下する養成プロセスは縮小し、生産要素をサンダーソニア切花、キンギョソウなどの生産プロセスに振り向け、それらの純収益合計は3200万円あまり増加する。その一方で、球根数を確保するために大型球根購入プロセスが増加し、球根の供給関係のプロセス(費用)は8400万円もの増加になる。したがって、球根養成技術に問題のある経営は、生産物及び球根の価格条件に変化のない限り、球根養成技術の改善によって大型球根の購入量を少なくすることで経営改善ができる。
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成果の活用面・留意点 |
- サンダーソニアは栽培開始以来、年々販売価格が低下している。したがって、現地で活用するためには切花の販売価格が低下する条件の下で適用する必要がある。
- サンダーソニア以外でもユリなど球根性作物においては、現地調査の上技術係数を確定すればこの手法が適用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
経営管理
栽培技術
サンダーソニア
すいか
にんじん
ゆり
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