タイトル | 小麦品種の赤かび病抵抗性とマイコトキシン産生性とは相関しない事例 |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 1999~2001 |
研究担当者 |
齊藤初雄 佐藤 剛 田中健治(食総研) |
発行年度 | 2002 |
要約 | 赤かび病罹病小麦品種に産生されるトリコテセン系マイコトキシンの種類、産生量は、必ずしも赤かび病抵抗性程度とは一致しない。あやひかりは抵抗性が強くないが、マイコトキシンの一つデオキシニバレノールの産生量が常に少なく、マイコトキシン産生抑制型品種として位置づけられる。 |
キーワード | 赤かび病抵抗性、食品汚染、マイコトキシン、デオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV) |
背景・ねらい | コムギ赤かび病に罹病した小麦では、マイコトキシン(カビ毒)が産生される。カビ毒の一つデオキシニバレノール(DON)については1.1ppmの暫定規制値が設定された。最近、抵抗性品種や外観健全な麦粒からもマイコトキシンが検出される事例が明らかとなった。そこで、小麦品種の赤かび病抵抗性とマイコトキシン産生性(マイコトキシンの種類、産生量)との関係を検討する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 各品種とも3,000~4,000粒を1粒ずつ外観健全粒、外観汚染粒(軽度赤かび粒)、屑粒(重度赤かび粒)に分別し、外観汚染粒率を算出した。マイコトキシンの分析には1検体当たり25g(700~1,000粒)、各品種4検体を供試し、検出にはECD検出器付きGC、確認にはGC-MSを用いた。 2. 赤かび病抵抗性の異なる小麦6品種の軽度赤かび粒から、分析対象の4種のマイコトキシンのうちデオキシニバレノール(DON)、ニバレノール(NIV)、3-アセチル-デオキシニバレノール(3-Ac-DON)の3種(2000年)のトリコテセン系マイコトキシンが、2001年度ではDON、NIVの2種が検出された(図1、図2)。 3. あやひかり(抵抗性中~やや弱)の軽度赤かび粒率は、農林61号(中~やや強)や蘇麦3号(極強)より常に高いが(表1)、DONの産生量は両品種より低い(図1、図2)。また、蘇麦3号のDONの産生量は、農林61号やあやひかりよりもかなり多い(図1)。 4. 延岡坊主小麦も抵抗性極強であるが、軽度赤かび粒率は蘇麦3号より高いにもかかわらずDON、NIVの産生量は少ないか全く認められない(図1、図2)。 5. 以上のように、小麦品種の赤かび病抵抗性程度とマイコトキシン産生量とは相関しない。あやひかりは抵抗性が中程度であるが、マイコトキシンの産生量は常に少ない。従って、あやひかりはマイコトキシン産生抑制型品種として位置づけられる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. あやひかりは赤かび病多発時には被害粒率が高まり、品質が劣化することがあるため、適地適作と適期防除に努める必要がある。 2. 延岡坊主小麦もマイコトキシン産生抑制型品種として位置づけられるが、極晩生、弱桿、少収で普及品種にはできない。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 病害虫 小麦 抵抗性 抵抗性品種 品種 防除 |