タイトル | 籾数制御と晩植による早生酒米「五百万石」の高品質栽培技術 |
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担当機関 | 石川農研 |
研究期間 | 1998~2002 |
研究担当者 |
猪野雅栽 橋本良一 黒田晃 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 幼穂形成期の生育量に応じた穂肥施用による適正籾数(24千粒/m 2)への誘導と、晩植による高温登熟回避によって、「五百万石」の高品質生産が可能となる。 |
キーワード | 早生酒米、五百万石、適正籾数、高温登熟、晩植 |
背景・ねらい | 石川県には40以上の酒造業者があり、特定名称酒の生産比率は60%以上と高く、酒造好適米の使用割合も高い。しかし、県産の主要酒米品種「五百万石」の特等および1等比率は低く、酒造業者から品質向上が強く求められている。品質低下の要因として近年の高温条件下での登熟と、多収志向による籾数過多が考えられる。そこで、高温登熟を回避するための晩植と適正籾数への誘導とを組み合わせた「五百万石」の高品質栽培技術の確立を図る。 |
成果の内容・特徴 | 1. 「五百万石」の稚苗を、慣行の移植期である4月末よりも遅い5月20日および5月30日に移植した結果、慣行移植の出穂期および成熟期に対して、5月20日移植ではそれぞれ6~11日および8~17日遅くでき、5月30日移植ではそれぞれ8~17日および19~23日遅くできた。登熟期間中の平均気温は、慣行移植に対して5月20日移植では並~やや低く、5月30日移植では0.7~2.5度低かった(表1)。 2. 幼穂形成期に、草丈、m 2当たり茎数、葉色値(SPAD502)を用いて算出した適正穂肥量(式)を晩植の「五百万石」に対し施用することにより、穂揃期の目標窒素吸収量および、m 2当たり籾数を得ることができる(表2)。なお、制御可能な幼穂形成期窒素吸収量の範囲はm 2あたり4~6gであり、7gを超えると制御は困難になる。 (式)穂肥窒素量={穂揃期目標窒素吸収量-(幼穂形成期窒素吸収量+土壌窒素供給量)}/施肥窒素利用率(0.65) 3. 酒造業者から求められている、玄米千粒重26g以上は5月30日移植で確保しやすい(表2)。 4. 醸造適性の重要な指標となる線状心白発現率は、籾数の適正制御と登熟期間の平均気温を低下させることにより高めることができる(表1、表2、図1) 5. 晩植栽培によって胴割れ粒の発生が少なくなり、70%搗精での砕米歩合や無効精米歩合が低くなる(表3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 晩植栽培の「五百万石」を用いることで、酒質に優れる地酒を醸造できる。 2. 5月20日移植の「五百万石」の成熟期は、慣行移植の「コシヒカリ」と同時期となり、5月30日移植では1週間程度遅くなる。 3. 石川県加賀地方平坦部での結果であり、山間地での移植期は別途検討する必要がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 高品質栽培技術 酒造好適米 施肥 品種 |