タイトル | 葉緑素計SPAD−502を用いた稲発酵飼料用イネβ-カロチン含量の簡易推定法 |
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担当機関 | 三重科技セ |
研究期間 | 2000~2003 |
研究担当者 |
平岡啓司 小出勇 田中善之 浦川修司 神田幸英 小西信幸 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 乳熟期から黄熟期における稲発酵粗飼料用イネの立毛時β-カロチン含量は、葉緑素計SPAD-502で止葉を測定することで簡易に推定できる。 |
キーワード | 稲発酵粗飼料用イネ、β-カロチン含量、SPAD-502、簡易推定法、止葉 |
背景・ねらい | 肉用牛肥育体系に稲発酵粗飼料用イネを給与する際、β-カロチン含量の迅速な把握が必要である。β-カロチン含量は、一般的に高速液体クロマトグラフィーにより測定されているが、前処理等が煩雑で測定に時間を要し、生産現場に対して迅速な対応が図れない場合が多い。 SPAD-502(葉緑素計)は、葉身に含まれる葉緑素を簡便に測定し、得られた数値をもとに適切な施肥管理を行う目的で広く普及している。 そこで、SPAD-502による葉色値とβ-カロチン含量の関係を検討することで、立毛時における稲発酵粗飼料用イネβ-カロチン含量の簡易推定法を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 稲発酵粗飼料用イネ(移植5月上旬、元肥窒素8kg/10a 追肥窒素0.4kg/10a 品種:ホシアオバ)のβ-カロチン含量は生育にともない低下し、それにともない第1葉身(止葉)と第2葉身(止葉以下第2葉)および第3葉身葉(止葉以下第3葉)のSPAD値も低下する(図1)。 2. 各葉身(第1葉身~第3葉身)のSPAD値と化学分析値の間には正の相関があり、特に第1葉身および第2葉身の相関(第1葉身:r=0.90 第2葉身:r=0.91)が高い。第3葉身が、第1葉身と第2葉身よりも相関が低い要因として、下位葉からの枯れ上がりが考えられる。そのため、SPAD-502によるβ-カロチン含量の簡易推定には最上位葉の第1葉身を用いる(図2)。 3. 第1葉身のSPAD値から地上部β-カロチン含量(mg/kgDM)を推定するには、回帰式y=2.2x-38.5(r=0.93)をもちいる。ここで、yは地上部のβ-カロチン含量の推定値、xはSPAD値とし、SPAD-502の値は第1葉身の値とする。(図3)。 4. 策定した推定式に未知試料を当てはめ推定精度を検証した結果、化学分析値との間に高い相関(r=0.92)が認められ、SPAD-502による簡易推定法は利用可能である(図4)。 5. 立毛時におけるβ-カロチン含量の推定法をまとめると、まず、健全な第1葉身を選び、葉身全長を約5等分してSPAD値を求め、得られた数値の平均値をSPAD値として推定式のxに代入し、地上部β-カロチン含量を推定する。 |
成果の活用面・留意点 | 1. SPAD-502は従来より施肥管理に利用され、普及センター等でも広く普及していることから、生産現場において迅速にβ-カロチン含量を推定することができる。 2. イネの生育にともない葉身部先端の損傷や欠損があることから、SPAD-502の測定には、損傷等の少ない個体を圃場全体から偏りのないように選び測定する。 3. SPAD-502によるβ-カロチンの簡易推定法は、あくまでも収穫前立毛イネのβ-カロチン含量を把握するための方法であり、サイレージ中のβ-カロチン含量の推定には、サンプリング(測定対象となる葉身が不明確)や発酵品質等の関係から本方法を利用することはできない。 4. β-カロチン含量およびSPAD値は、品種、栽培条件等により異なる可能性があるため留意が必要である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 栽培条件 飼料用作物 施肥 肉牛 品種 |