タイトル | 脂肪酸カルシウム給与が泌乳牛の採胚成績を向上させる一助になる |
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担当機関 | 静岡畜試 |
研究期間 | 1999~2002 |
研究担当者 |
加藤雅通 佐野文彦 三宅晃次 赤松裕久 鈴木秀歌 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 泌乳中の乳牛に対し、過剰排卵処置による胚生産を行う場合、飼料に脂肪酸カルシウム(アマニ油由来でリノレン酸主体)を給与することで正常胚率の向上がみられた。また、1日給与量は200gで良いことが判明した。 |
キーワード | 泌乳牛、過剰排卵処置、脂肪酸カルシウム、正常胚率、1日給与量 |
背景・ねらい | 過剰排卵処置による採胚成績の向上は、胚移植を行う上で費用・労力の低減となり大きな経済効果がある。 泌乳牛に対する脂肪酸カルシウム(脂肪酸Ca)の給与は、繁殖性の向上につながることが知られているが、これが過剰排卵処置による採胚成績に影響があるかを検討した。 |
成果の内容・特徴 | 1. 試験1:分娩後60日以降のホルスタイン種24頭を6頭ずつに区分し、発情確認後から過剰排卵処置による排卵時まで、表1に示す4種の脂肪酸Caを300g/日給与し、図1に示す過剰排卵処置を1乳期2回(半数は給与→無給与、他の半数は無給与→給与)行い、採卵成績を比較した。なお、図1に示す時期に採血と採乳を行い、性状の変化を検討した。 2. 試験2:試験1で成績の良かったSFCの300g給与を対照とし16頭を2区に分けて200gまたは400g給与して試験1と同様に採卵成績を比較した。 3. FO、SF、BMの給与では無給与時に比較して、採胚成績が劣るか同等であるが、SFC給与では正常胚数が多くなる傾向があり、正常胚率は有意に高い。(表2) 4. SFCの給与量は200g/日で充分である。(表3) 5. 脂肪酸Ca給与による血液性状(BUN,GOT,GPT,GGT,TP,T-CHO,TG,プロジェステロン濃度)牛乳性状(PRO,LAC,SNF,MUN)については、無給与と差はなかったが、乳脂率については、FO給与で有意に低下する。(データ略) 6. SFC給与による血中脂肪酸Ca組成の推移では、オレイン酸は給与により早く上昇するが、消失も早い。また、リノレン酸は給与により上昇し、比較的長く維持される。(データ略) |
成果の活用面・留意点 | 1. 脂肪酸Caの給与が短期間の場合、嗜好性の悪い時には飼料摂取量が低下し、悪影響を示すものがあり、牛群全体または長期にわたる給与法等の飼養管理全体から検討する必要がある。 2. SFCは開封すると変敗が早く、嗜好性が悪くなるため、保存には密封して冷蔵する等の充分な配慮が必要である。 3. リノール酸アルブミンを添加した培養液で発生した体外受精胚は耐凍性が高いことが知られており、リノール酸を多く含む脂肪酸Ca等を給与することで、採取した胚の耐凍性が改善される効果も期待できる。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 飼育技術 乳牛 繁殖性改善 |