タイトル | 傾斜地を利用した豚胚の非外科的移植 |
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担当機関 | 神奈川県畜研 |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
亀井勝浩 橋村慎二 小嶋信雄 青木稔 前田高弘 仲沢慶紀 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 豚胚の非外科的移植における受胎率及び産子数を改善するため、移植胚及び移植液を子宮のより奥へ流入させること目的として傾斜(10~15°)地を利用した移植法を検討した。受胚豚の頭部を低く、臀部を高くして移植した試験区では、水平な場所で移植した対照区に比べて受胎率を大幅に改善することができた。しかし、産子数については、試験区は対照と同等であり改善されなかった。 |
キーワード | 豚胚、非外科的移植 |
背景・ねらい | 近年、人工授精用カテーテルを用いた豚胚の非外科(経腟)的な移植手法が開発・実施されてきている。現在、この手法は外科的な移植手法に比べて、受胎率については技術者による差がまだあり、一般的に産子数の低下が認められることが知られている。 これらの問題点を改善するためには、移植胚及び移植液を確実に子宮内へ注入することが必要と思われる。移植胚及び移植液を子宮のより奥へ流入させることを促すために本試験を行った。すなわち、通常は水平な場所で移植を行うのに対して、受胚豚を傾斜地に誘導し、頭部を低い方に臀部を高い方に位置させた状態で胚を移植することにより、移植胚及び移植液の逆流防止を図るとともにその効果を検討した。 |
成果の内容・特徴 | 1. 供胚豚及び受胚豚にはPMSG-hCG処置により、過排卵と発情同期化を図り、妊娠6日目の拡張胚盤胞~脱殻胚盤胞を供試胚とした。 2. 米村らの方法に従い、人工授精用カテーテルを用い、受胚豚1頭あたり20~25個の供試胚を10~15mlの移植液(10%牛胎仔血清添加TCM199)とともに経膣的に子宮内へ注入した。 3. 試験区では10~15°の傾斜地で、受胚豚の頭部を低く臀部を高くして移植を実施し(図1)、対照区では水平な場所で移植を実施した。 4. 受胎率については、対照区の30.8%(4/13)に比べて、試験区では100%(6/6)と大幅に改善することができた(表1)。傾斜地で受胚豚の臀部を高くして移植したことが移植胚及び移植液の逆流を防ぎ、移植胚及び移植液を子宮のより奥方へ流入させることにつながり、高受胎率になったものと考えられる。 5. しかし、試験区では分娩率及び着床率については、改善することができなかった(表2、表3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 移植胚及び移植液の逆流防止を促すには、移植終了後、傾斜をつけたまま5分間、豚房(水平な場所)に戻してからは給餌するなどして10~20分程度、受胚豚を立たせ続けることが重要である。 2. 対照区では、移植直後に移植液の逆流防止が見られたのに対して、試験区では逆流が一切見られなかったことから、傾斜をつけることが有効と思われる。 3. 分娩率及び着床率の改善には、さらに工夫が必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 過排卵 傾斜地 豚 |