タイトル | 家族経営における家族以外への事業継承方式成立のポイント |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
山本淳子 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 農業後継者がいない家族経営の事業を家族以外の者が引き継ぐという新しい継承方式が、様々な地域・経営部門において出現している。このような新たな継承が成立するためには、事前の契約による信頼関係の構築や引退する経営者の収入確保などの対応を実施することがポイントとなる。 |
キーワード | 事業継承、家族経営、新規参入者 |
背景・ねらい | 近年、農業後継者のいない大規模家族経営が増加する一方で、新規参入希望者も増加している。これまで家族経営は家族員(子供)が継承してきたが、このような状況のなかでは、新規参入者など家族以外の者が、後継者不在の家族経営の事業を技術・信用も含めて継承するという新しい方式を導入していく必要がある。そこで、家族以外への継承方式の実施状況の把握とその特徴の検討から、家族以外への継承が成立するためのポイントを明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 全国の農業改良普及センターに対する調査から、家族以外への継承(技術・信用の引き継ぎ期間を設けた上で農地・施設等を継承したもの)は27事例確認された。事例のある地域・経営部門は様々である。また、継承者は20~30歳代の若い世代の非農家出身者が多い。一方、技術の引継ぎ開始時における経営者の年齢は60歳代など高齢者が多く、引継ぎ期間は5年以内に設定されている。これまでに13事例が引継ぎ期間を終えて独立している(表1)。 2. 家族以外への継承事例では当事者が様々な対応をとっており(表2)、引継ぎ期間や農地等の継承の方法について事前に契約を結ぶことによって両者の信頼関係を構築する(表2の(1)、以下同じ)、継承者の経営にパートとして勤務したり技術指導料金を設定する等によって経営者の引退後の収入を確保する(2)といった対応が確認された。これらの点は、家族への継承の場合には問題として表面化しにくいものであるが、家族以外への継承では意識的な対応がとられている。 3. 家族への継承では、後継者(継承者)の確保や、有形(農地・施設等)及び無形(技術・信用等)の経営資源の的確な引き継ぎが重要であるが、家族以外への継承の場合にも同様に、これらの点への対応がとられている(表2)。ただし、その具体的内容は家族への継承の場合とは異なり、継承者の確保については、求人雑誌で募集する・関係機関に紹介を依頼する等によって、幅広く人材を求めている(3)。有形の経営資源は、売買、貸借(リース)、法人化して代表者を交代、借地の耕作者の交代等の様々な形で引継ぎが行われている(4)。また、経営者の年金受給時期に合わせて有形の経営資源の引継ぎ時期が決められ、それをもとに無形の経営資源の引継ぎ期間が設定されている(5)。 4. 以上より、家族以外への継承は、家族への継承の場合とは異なるポイントがあり(表3)、特に、継承方法等についての事前の契約による両者の信頼関係構築や引退する経営者の収入確保、無形の経営資源の効率的な引継ぎ等が必要である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 新規参入の促進等によって担い手育成を進める際の基礎資料として活用できる。 2. 家族経営を対象にした調査結果であるが、事例には家族以外への継承過程で法人化した経営も含まれている。 |
図表1 | |
カテゴリ | 経営管理 |