タイトル | 紫外線照射によるエリンギの担子胞子形成欠損突然変異株の作出法 |
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担当機関 | 長野県農業総合試験場 |
研究期間 | 2002~2003 |
研究担当者 |
角田茂幸 |
発行年度 | 2003 |
要約 | エリンギのプロトプラストに紫外線照射を行うことによって、担子胞子形成欠損変異株の突然変異体が作出できる。 |
キーワード | |
背景・ねらい | きのこ栽培においてきのこから発生する胞子は、人間に胞子アレルギーを及ぼし、きのこ栽培施設の汚染等の影響も大きい。また、自然界に多量な胞子を飛散することは生態系の撹乱が危惧される。そのため、きのこ栽培において担子胞子形成欠損(無胞子性)品種の育成は重要な課題である。近年、エリンギは生産量が急激に増加しているが、その栽培面できのこから飛散する多量の胞子が栽培施設を汚染することによりきのこが立ち枯れとなる問題が起きている。それらの問題に対応するため突然変異により担子胞子形成欠損の有用変異体を作出する。 |
成果の内容・特徴 | 1. エリンギ菌糸体から次のプロトプラスト調整条件によりプロトプラストを作る。 品種・系統により収率が異なるので注意が必要である(表1)。 (1)前培養:PDA培地(Potato Dextrose Agar(Nissui))スラント4本/24℃10日間 (2)液体培養:PD液体培地(Potato Dextrose Broth(DIFCO) pH6.0)/24℃6日間 (3)処理量:菌糸体50mg/1.0ml細胞壁溶解酵素 細胞壁溶解酵素;1.0% Novozym 234,0.1% CHITINASE, 1.0% CELLULASE“ONOZUKA”RS,1M-Mannital 200mM-Maleate buffer(pH5.5) (4)酵素反応:30℃/60分 2. プロトプラストの濃度を107個/1mlに調整し、プロトプラスト再生培地(0.6%ma lt extract,0.4%yeast extract,0.4%peptone,0.4%glucose,0.4%サンパールCP,1.0%agar・ 0.5M-Sucrose培地シャーレ)に0.1mlコンラージ棒で塗布する。 3. 紫外線ランプ(日立GL15,15W)からプロトプラストを塗布した再生培地までの距離10 cm、照射時間10~15秒の条件で照射する。この照射時間で致死率94.4~99.9%となる(表2)。 4. 再生培地を24℃程度で培養を行い、実体顕微鏡で観察しながら再生菌糸を取る。再生 した菌糸は全て取ることが必要である。再生率は、品種・系統により異なるので注意が 必要である(表1)。 5. 得られた再生菌糸はPDA培地等で培養を行う。さらに培養した2核菌糸をきのこ栽培 培地に接種し、きのこ子実体を作り、担子胞子形成欠損の突然変異体を選抜する(表3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 得られた有用形質変異株を品種にすることはもとより、その菌株の構成1核菌糸を育 種素材として活用できる。 2. 酵素「Novozym 234」を他の酵素で代替することはできるが、プロトプラストの収率 が低下する場合があるので注意が必要である。 3. プロトプラスト再生培地にプロトプラストをコンラージ棒で塗布するが、プロトプラ ストが破損しないよう注意が必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 育種 エリンギ 品種 |