種子発芽におけるにおけるレドックスネットワークモデル

タイトル 種子発芽におけるにおけるレドックスネットワークモデル
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2002~2003
研究担当者 矢野裕之
発行年度 2003
要約 酸化還元酵素チオレドキシンによるレドックス制御は、種子の発芽の際、システインプロテアーゼを活性化させると同時にその基質をときほぐし、分解しやすい状態に構造変化させる。一連のレドックス反応を同時に制御することで、分解反応を効率的に行う。
キーワード チオレドキシン、種子発芽、レドックス制御
背景・ねらい 種子蛋白質の機能解明は、種子品質・栽培生理研究や、醸造等における工業的な応用の観点からも重要な研究課題である。アリューロン層を含む種子表層は発芽の際に重要な役割を果たす酵素群が存在すると考えられ、種子蛋白質研究の重要な対象である。一方、酸化還元酵素チオレドキシンによるレドックス制御(SS⇔-SH,HS-の制御)はリン酸化/脱リン酸化に匹敵する重要な制御様式であることが最近明らかになりつつある。本研究では、担当者が開発したジスルフィドプロテオーム(蛋白質ジスルフィド結合の酸化還元状態を包括的に解析する手法)を用いて、レドックス変化の観点から種子表層蛋白質の挙動を解析する。
成果の内容・特徴 1.
酸化還元酵素チオレドキシンによる新しいレドックス制御ネットワークを解明した。
2.
図1は、種子表層(重量比3%)から水溶性蛋白質を抽出し(種子表層抽出液)、活性型チオレドキシンを作用させ、蛋白質の挙動をジスルフィドプロテオームにより解析したものである。チオレドキシン酵素系を作用させると、胚特異的蛋白質(○で囲んだスポット:図1A下)が消失する(図1B下)。さらにシステインプロテアーゼの阻害剤であるロイペプチンの存在下でチオレドキシン酵素系を作用させると、これらの蛋白質はジスルフィド(S-S)結合の解裂を示す蛍光スポットとして検出される(図1C上)。以上の結果から胚特異的蛋白質がジスルフィド結合を有し、チオレドキシンの新しいターゲットであることを明らかにした。チオレドキシンはこれを還元的に切断してときほぐし、種子表層に存在するシステインプロテアーゼがこれを分解すると考えられる。
3.
S-S結合を解裂させ、SH基を蛍光試薬モノブロモビマンで保護した(ときほぐされた状態の)胚特異的蛋白質は種子表層抽出液中では分解されないが、チオレドキシン酵素系の添加により分解される。さらに阻害剤ロイペプチンを添加した場合には消化されない。この結果から、チオレドキシンがシステインプロテアーゼを活性化すると考えられる。
4.
以上の結果から、チオレドキシンは種子表層に存在するシステインプロテアーゼを活性化し、同時にその基質である胚特異的蛋白質のS-S結合を解裂することでときほぐし、消化しやすい構造に変化させることが示される(図2)。チオレドキシンは両レドックス反応を同時に制御することで、分解反応を効率的に行う。複数のレドックス反応を同時に制御することにより、環境変化に迅速に対応することを可能にする。
成果の活用面・留意点 1.
ジスルフィドプロテオームを用いてチオレドキシン酵素によるレドックス制御を包括的に解析することができる。
2.
チオレドキシン酵素の挙動を明らかにすることで、植物のレドックス制御機構の解明に貢献できる。
図表1 217375-1.jpg
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