施設トマトにおける線虫のリサージェンスを回避する微生物資材と植穴くん蒸の併用技術

タイトル 施設トマトにおける線虫のリサージェンスを回避する微生物資材と植穴くん蒸の併用技術
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2002~2003
研究担当者 水久保隆之
竹原利明
伊藤賢治
相場聡
仲川晃生
発行年度 2003
要約 初作にパスツリア菌を全面処理し、次作以降クロルピクリン・D-Dくん蒸剤の植穴くん蒸処理およびパスツリア菌の植穴少量処理と菌根菌定着苗の定植を行う体系は、施設トマトの線虫害を速やかに終息させ、体系処理中止後も線虫の密度回復を抑制する。
キーワード トマト、サツマイモネコブセンチュウ、アーバスキュラー菌根菌、パスツリア菌、植穴くん蒸処理、リサージェンス、IPM
背景・ねらい 環境保全の要望等の背景から、施設栽培における減農薬線虫防除体系の確立が危急の課題である。施設栽培では、土壌くん蒸剤の投入、有機物の不足、塩類集積などにより線虫類の有力天敵を含む土壌微生物相が破壊され、サツマイモネコブセンチュウ(以下線虫)のリサージェンス(誘導多発生)が常態化している。クロルピクリン系くん蒸剤、熱水土壌消毒などの防除手段は線虫防除に卓効がある反面、土壌微生物相も破壊するため、線虫のリサージェンスを終息させることができない。線虫害のIPMでは農薬の少量投与と天敵補給により、生産と天敵微生物相の回復を最適化させる戦略が合理的である。そこで、施設栽培トマトにおいて植穴少量くん蒸処理とパスツリア菌(線虫天敵微生物)・菌根菌処理を併用し、実用的で持続可能な線虫の総合防除(IPM)体系を構築し、実証する。
成果の内容・特徴 1.
クロルピクリン・D-Dくん蒸剤の全面くん蒸処理はトマトの線虫害防除に卓効を示す(図1、表2)が、線虫のリサージェンス状態が維持されるため、処理を中止すると線虫密度が著しく回復し、生産も阻害される(表3:全面くん蒸中止)。
2.
熱水処理後の植穴くん蒸処理は線虫害の抑制(図1、表2)と生産(表3)の確保に有効であるが、リサージェンス状態は維持されるため、植穴くん蒸を中止すると線虫密度が回復し減収する。熱水処理では線虫害抑制のため植穴くん蒸処理の継続が必要である。
3.
初作にパスツリア菌製剤を1kg/10a全面混和し、次作以降微生物処理(パスツリア菌の植穴処理とアーバスキュラー菌根菌〔Glomus sp. R-10〕定着苗の定植を併用)を植穴くん蒸処理後に続ける体系処理は、線虫害を速やかに低下させ、第6作の体系処理中止後も低く抑える(図1、表2:微生物・植穴くん蒸)。その初期収量はやや低いが、第3作で線虫害が回避され、以降全面くん蒸処理と同等の高収量が確保される。
成果の活用面・留意点 1.
パスツリア菌製剤〔パストリア水和剤〕および菌根菌製剤は市販されている。
2.
植穴処理のくん蒸剤および天敵細菌の1作毎の使用量は、2000株/10aの場合、全面処理の1/5量以下に節約できる。
3.
仮に10年の継続防除効果を見込み、第5作で処理を中止した場合、パスツリア製剤、菌根菌、クロルピクリン・D-Dくん蒸剤の体系処理コストは、2万4千円/10a/年で消却できる。
図表1 217489-1.gif
図表2 217489-2.gif
図表3 217489-3.gif
図表4 217489-4.gif
カテゴリ 病害虫 くり コスト 栽培技術 施設栽培 土壌くん蒸 土壌消毒 トマト 農薬 防除

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