タイトル | 種子付きマットの利用により移植可能期間の長い水稲苗ができる |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 2003~2005 |
研究担当者 |
安本知子 岡田謙介 小倉昭男 松崎守夫 中西一泰(JA全農) 白土宏之 北川寿 鈴木光則((株)山本製作所) |
発行年度 | 2005 |
要約 | 種子付きマットを30℃の育苗器内で棚差で4日間出芽させることにより,育苗開始7日後から30日後まで移植可能な水稲苗(マルチステージ苗)を育苗できる。この期間であれば欠株率が5%以下となる苗丈7cm以上を確保でき,収量も変わらない。 |
キーワード | イネ、種子付きマット、マルチステージ苗 |
背景・ねらい | 水稲の移植栽培では播種量により育苗期間がほぼ決まってしまうために、状況に応じて移植日を柔軟に変えることが難しい。育苗期間を短くすると通常の土を用いた苗では根量が不十分で田植機に乗せられる強度の苗マットができない。種子と覆土があらかじめもみがら成型マットに接着してある種子付きマットを使うことによりまだ根が伸びていない苗でも田植機に載せることが出来る。そこで、移植作業の計画を柔軟に組めるように,育苗開始後早い時期から30日程度までいつでも安定して市販の田植機で移植できる苗(マルチステージ苗)の育苗技術を開発し、移植精度や収量性から見た移植可能期間を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. マルチステージ苗は浸漬・乾燥処理した種子150gと覆土を苗箱サイズのもみがら成型マットに接着した種子付きマットを用いて育苗する。マルチステージ苗を育苗器を用いて出芽させる場合、積重で3日育苗器に入れて苗丈1cmで緑化するよりも、棚差にして4日間育苗器に入れて苗丈を3cmまで伸ばしてから緑化する方が育苗開始後7日目においても20日目においても苗の生育がよい(表1)。棚差で4日育苗器に入れることにより、7日苗でも7cm程度の苗丈となり、欠株率は5%以下となる。 2. 育苗器を用いて出芽させた場合、種子付きマットを用いたマルチステージ苗の苗丈はおよそ8日目で4-7cm、20日目で9-12cm、30日目で13cm程度である(表2)。苗丈は育苗期間7-12日で乳苗相当、20から30日で稚苗相当である。 3. 移植時の気象条件や圃場条件を揃えるために、育苗日数の異なるマルチステージ苗を同時に移植すると、苗丈が7cm以上あれば欠株率が5%以下で実用に適する(図1)。移植日が5月末の場合にはさらに小さい苗でも可能である。 4. 同時に育苗を開始したマルチステージ苗の出穂期は育苗期間7-12日が最も早い(表2)。それに比較して育苗期間4日以下では温度の低い本田期間が長くなるため2-4日遅くなり、育苗期間20-30日では込み合った苗箱内での日数が長くなるため2-6日出穂期が遅い。 5. マルチステージ苗の収量は育苗期間によって一定の傾向が見られない(表2)。また、それぞれの移植日に同時に移植した慣行育苗法による土付苗とは4年間全体でみると有意差はない。 6. 以上より、マルチステージ苗は苗丈7cm以上の7日苗から30日苗程度までならいつでも移植可能である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 種子付きマットを稚苗用苗箱に入れて、30℃の育苗器内で出芽させて育苗した結果である。 2. コシヒカリの種子付きマットを用いた結果である。 3. およそ苗丈5cm以下は植付深さを1cm、苗丈5~8cmでは植付深さを2cm、苗丈8cm以上は植付深さを3cm程度とした。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 育苗 乾燥 水稲 播種 |