タイトル | 2種類の脱臭装置を備えた乳牛ふんの消臭型堆肥化ハウス |
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担当機関 | 神奈川畜技セ |
研究期間 | 2002~2005 |
研究担当者 |
川村英輔 田邊眞 齋藤直美 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 乳牛ふんの消臭型堆肥化ハウスを開発した。ハウスの特徴は、1.堆肥化時の臭気を外部に拡散させない閉鎖型、2.微生物脱臭と酸化チタン脱臭による畜産臭気脱臭システムを組み込んだ消臭型、3.発酵乾燥床に遮水シートを埋設した環境負荷低減型である。 |
キーワード | 乳牛ふん、堆肥化、堆肥化ハウス、微生物脱臭、酸化チタン脱臭 |
背景・ねらい | 家畜ふんの堆肥化時にはアンモニアを多量に含む臭気が発生し、これが悪臭問題の原因となっている。そこで、都市と共存する畜産を実現するため、微生物脱臭と酸化チタン脱臭の2種類の脱臭装置を備えた消臭型の乳牛ふん堆肥化処理施設を開発し実証する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 堆肥撹拌移送装置を備えた間口8m、奥行35m、中心高4.8mの透明樹脂フィルム張り堆肥化ハウスに、6m3の菌液と8.8m3の気液接触槽をもつ微生物脱臭槽と166m3の2重屋根の内側に酸化チタンを塗布した酸化チタン脱臭槽からなる畜産臭気脱臭システムを組み入れた、乳牛25~30頭のふんを処理する施設である。また、発酵乾燥床に遮水シート(軟質塩化ビニル、厚さ1.0mm)を埋設し、ふん尿成分が地中に浸透しない構造である(図1)。 2. ハウスは閉鎖型でふん等の搬入出時以外は扉を閉鎖した。副資材は全量戻し堆肥を使用することにより、乳牛ふんを夏期は799kg/日、冬期は763kg/日処理できる(表1)。戻し堆肥量を乳牛ふんの約2倍量とすると水分調整を気にすることなく運転が可能で、堆肥化発酵も最高温度は60℃を超え良好である。一方、戻し堆肥のみ使用して処理し、運転開始後3年経過した生産堆肥の電気伝導率は16.7mS/cmと高い値である。 3. 畜産臭気脱臭システムでは、高濃度のアンモニアを含む堆肥化ハウス臭気を微生物脱臭装置、除湿装置、酸化チタン脱臭装置により脱臭する(図2)。微生物脱臭装置では脱臭菌液の硝化に家畜用浄化槽処理水中の微生物を利用し、酸化チタン脱臭装置では太陽の紫外線を利用するという、自然の力を最大限に活用する。堆肥化ハウスの換気は、水分蒸散量を確保するため換気回数が4~5回/時間となるよう送風する。 4. 堆肥化ハウス内のアンモニア濃度は、夏期の日中には150ppmを越える。畜産臭気脱臭システムの想定処理能力は、アンモニア除去率95~98%で、実証施設での測定値は92.3%~97.9%である(表2)。硫黄化合物と低級脂肪酸の脱臭効果は顕著ではない。 5. 施設(乳牛25~30頭)の建設費は、堆肥化ハウス770万円、攪拌移送機640万円、換気装置310万円、微生物脱臭装置110万円、酸化チタン脱臭装置150万円、遮水シート75万円、ランニングコストとして電気代約5万円/月(攪拌移送機、送風機、ポンプ)である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 冬期は生産堆肥の水分が高くなるので、副資材に戻し堆肥のみを使用する場合は、夏期に生産堆肥を貯蔵しておき、冬期に貯蔵堆肥を使用して水分・比重調整を行う。 2. 副資材に戻し堆肥のみを使用すると生産堆肥の塩類が高くなるので、堆肥を使用する際にはこの点に注意する。 3. 微生物脱臭装置の脱臭効率を維持するため、1~数ヶ月に一度、脱臭菌液を交換する。使用済み菌液は、公共下水放流、浄化槽処理、ほ場還元など適正に処理する。 4. 堆肥化ハウス内は臭気濃度が高いので、作業時には保護マスク等を着用する。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 環境負荷低減 乾燥 コスト 乳牛 |