タイトル | 冬季の気温上昇がウメ「紅サシ」の果実生産に及ぼす影響 |
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担当機関 | 福井園試 |
研究期間 | 2002~2006 |
研究担当者 |
上中昭博 |
発行年度 | 2005 |
要約 | ウメ「紅サシ」は、11、12月に温度を高くすると落蕾や不完全花が増加する。また、早期加温栽培すると開花・展葉の遅延、果肉細胞の減少などの現象がみられる。これらのことから気候温暖化による冬季の気温上昇は果実生産を不安定にすることが懸念される。 |
キーワード | ウメ、気候温暖化、不完全花、自発休眠、開花、展葉 |
背景・ねらい | IPPC(気候変動に関する政府間パネル)は、2001年に地球の平均地上気温が20世紀に約0.6℃上昇したこと、21世紀末までにさらに1.4℃~5.8℃の上昇が予測されることを科学的な根拠を示して明らかにしている。果樹栽培における気候温暖化の影響としては、カンキツやリンゴの栽培適地の北上が提起されているが、ウメ栽培への影響は明らかではない。そこで温暖化の影響を明らかにして、今後の対策の方向性を見いだす。 |
成果の内容・特徴 | 1. ウメ「紅サシ」の生育調査結果(福井県園芸試験場 1989~2002年)と気象との解析では、これまでいわれている雌しべの欠損した不完全花の発生率と10月の雌ずい形成期の日照、降水量や開花期の気温との関係がみられるが、最も高い正の相関は11、12月の気温との関係である(図1)。 2. 実際に11、12月(平年値11月11.8℃、12月7.0℃)の温度を13℃にすると、開花に至らずに落蕾する花芽が増加し、開花してもほとんどの花が不完全花になってしまう(図2)。 3. 一方、1月からの加温栽培では、早期加温ほど開花期は前進するが、開花、展葉の遅延、不完全花の増加、葉数の減少(表1)や果実の果肉細胞の減少(図3)などの現象がみられ、露地では花芽は1月中下旬頃まで、葉芽は2月中下旬頃まで自発休眠からの覚醒が不十分と判断される。 4. 以上のことから、11、12月の気温上昇は花芽や雌ずいの発達に支障をきたし、冬季の気温の上昇は花芽、葉芽の不十分な自発休眠覚醒による影響が増加すると推察される。特に不完全花率が高くなることは結実以前の果実生産制限要因となるので懸念される。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 温暖化の進行は急速であることが予想されるので、温暖地での栽培検証などにより気温上昇程度による影響の精査や他品種の気温上昇の適応性の確認など、永年性果樹のウメでは早期からの対策が必要である。 2. 生育調査項目に落蕾率(12月の花芽数に対する開花数)を加えて、落蕾の動向を調査する。 3. 他品種については検討していない。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | うめ 品種 りんご その他のかんきつ |