タイトル | ロックウール栽培に伴う余剰養液処理システムの開発 |
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担当機関 | 愛知農総試 |
研究担当者 |
伊藤裕朗 近藤和哉(豊橋種苗株式会社) 山田良三 瀧 勝俊 谷田貝 敦(株式会社ニッチツ) 飯田孝則 |
発行年度 | 2005 |
要約 | ロックウール栽培の余剰養液処理システムは、夏秋トマト栽培において戻り液の75%を再利用し、残り25%の排液中に含まれる窒素をイオウ酸化菌によりガス化して空中に発散させ、リンを浄水場発生汚泥に吸着させるもので環境保全に有効である。 |
キーワード | 養液栽培、戻り液の再利用、脱窒、イオウ酸化菌、リンの吸着 |
背景・ねらい | ロックウール栽培は、生産性の高い栽培方式としてトマトを始め、イチゴ、バラ等多くの作物で普及している。しかし、掛け流し方式の給液管理が行われ、給液量の30%程度が余剰養液として、施設外に排出されている。また、当山間地域は、本県の水源地に立地し、農業生産に対しても環境面の制約が大きい。そこで、地域の基幹作物である夏秋トマトを対象に、平成13年度から関係機関、民間との共同で、窒素、リンを大幅に除去できる処理システムの開発に取り組んだ。 |
成果の内容・特徴 | 1. 慣行栽培における夏季、晴天日の1日当たりの排液量は1,500L/10aに達し、硝酸イオン濃度も800~900ppmと高かった。余剰養液の排出量と硝酸イオン濃度の高さから、戻り液を再利用し、排液量の大幅削減が不可欠と判断される(データ省略)。 2. 新らたに培養液300Lを作成する際、培養液のイオン組成やECに悪影響を及ぼさない戻り液の混入量は最大90L程度であった。また、戻り液を新液に混入(ただし、1日の最初と最後の戻り液は、病害回避のため再利用しない)することで、排液量を従来の25%以下の350L/日程度まで削減できる(図1) 。 3. 脱窒装置は、2連式の長さ1.3m、径30cmの円筒型槽を用い、資材量(石灰とイオウの混合物を、2~3cmに粉砕したもの)は各槽75kgの計150kg/10aとした。イオウ酸化菌の増殖後、定量ポンプで排液を連続流入させる方式とした。排液中の硝酸イオン濃度は、処理前の900mg/Lから2槽を経由することにより、200mg/L以下に低減できる(図1、2、3)。 4. 脱窒後の排液は、リン吸着槽に送られる。浄水場発生汚泥を詰め込んだ吸着槽に上部から流入させ、槽内に滞留させることでリンの90%強が吸着できる(図1、4)。 5. 本システムの導入により、環境負荷量は従来の1/10以下まで削減できる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 排液処理システムは、H16年3月に本県設楽町のトマト・ロックウール栽培施設3.7ha(農家数17戸)に導入され、順調に稼働し、高生産性と環境保全型生産の両立が図られている。 2. 資材の表面が水あかや菌の屍骸等で汚損されると脱窒能力が低下する。汚損が著しい場合、資材を搬出し水洗いする。また、資材は1年で15%程度消耗するので、その分を補う。リンの吸着能力も作期の途中で低下するが、水洗いを行えば1年間使用できる。 3. 当システムは、培養液の殺菌、除菌への対応が万全ではないので、耕種的な対応を含め、病害対策には細心の注意をはらう。 4. 施設施工費は10a当たり130万円前後である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | いちご トマト ばら 養液栽培 |