タイトル |
胚珠培養による常緑性早咲きアジサイ種間雑種の育成 |
担当機関 |
群馬県農業技術センター |
研究期間 |
2004~2005 |
研究担当者 |
工藤暢宏
岡田智行
木村康夫
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発行年度 |
2005 |
要約 |
トキワアジサイを種子親にセイヨウアジサイを花粉親に用いて胚珠培養を行うと、種間雑種が作出できる。選抜した優良3系統、スプリングエンジェルシリーズ(仮称)は常緑性、早咲き特性があり、鉢物用アジサイとして有望である。
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キーワード |
花き、セイヨウアジサイ、トキワアジサイ、胚珠培養、種間雑種
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背景・ねらい |
セイヨウアジサイは花色が豊富で高い商品性があるが、開花時期など生育特性に関するバリエーションが少なく、「常緑」や「早咲き」の新品種育成が生産現場から望まれていた。 一方、台湾や中国南東部に分布するトキワアジサイは花序が白色で、園芸品種は育成されていない。しかし、トキワアジサイには常緑で冬季に開花する性質があり、既存のセイヨウアジサイと交雑できれば、冬季に開花するアジサイの新品種が育成できる可能性がある。そこで、この両者の種間雑種作出方法を検討し、作出個体から常緑性で1~2月咲きの鉢物向けアジサイ有望系統を選抜する。
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成果の内容・特徴 |
- トキワアジサイ×セイヨウアジサイ「ブルーリング」との交配では、受粉後2週間ほどで子房が緑化肥大するが、さく果に含まれる種子は不完全なものが多く、発芽率は10%程度であり(表1)、発芽実生は健全に生育するものが少なく、幼植物体はほとんど得られない。
- トキワアジサイ×セイヨウアジサイとの交配後60日以上の胚珠を1/2MS培地で培養すると30~40%が発芽し、30%程度の胚珠から幼植物体が得られる(表2)。
- 作出個体は花粉親であるセイヨウアジサイ特有の葉縁の鋸歯や主茎の斑点が観察され、雑種であると判断される。雑種個体の形態は両親にない八重咲き系統がみられたが、全体的には両親のほぼ中間の形態を示す。
- 胚珠培養により得られた約500の雑種個体から、常緑、早咲きで園芸的価値の高い3系統(表3)を選抜し、種苗登録出願中である。
- 選抜系統の特性は次の通りである。
- スプリングエンジェルピンクエレガンス(仮称)(図1左)は開花期が2~3月で、花序はガク咲き、装飾花は大輪で不完全な八重咲き、花色はパステルピンク(淡紫ピンク)である。
- スプリングエンジェルブルーエレガンス(仮称)(図1中央)は開花期が1~2月で、花序はガク咲き、装飾花は大輪で一重咲き、花色はパステルブルー(浅青紫)である。
- スプリングエンジェルフリルエレガンス(仮称)(図1右)は開花期が1~2月で、花序はガク咲き、装飾花は大輪で一重咲き、花色は白あるいはパステルピンク(淡紫ピンク)である。
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成果の活用面・留意点 |
- 選抜した優良3系統について、種苗法に基づく品種登録の出願を行い、出願公表中である。
- 鉢物の市場出荷量が少ない時期(1~3月)の園芸品種として生産者への普及が見込まれる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
あじさい
出荷調整
受粉
新品種
新品種育成
品種
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