タイトル | 畑土壌における水溶性イオンの移動実態から推定した降下浸透水量 |
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担当機関 | 千葉農総研 |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
八槇 敦 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 無作付けのほ場において、Brイオンが移動した土層内の水分量から求めた1~2カ月間の降下浸透水量は、黒ボク土では降水量の約65%、褐色低地土では約70%と推定される。 |
キーワード | 浸透水量、降水量、液相率、臭化物イオン |
背景・ねらい | 農地から排出される硝酸態窒素による環境負荷を評価する上では、作物栽培によって農地に残存する窒素量とともに、土壌浸透水量を把握する必要がある。そこで、土壌中の水溶性陰イオンの移動をモニタリングし、陰イオンが移動した土層内の水分量から浸透水量を推定する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 表層腐植質黒ボク土(平均土性:CL、千葉市)と中粗粒褐色低地土(平均土性:SL、野栄町)の無作付ほ場において、2002年8月~2004年6月に黒ボク土では4回、褐色低地土では7回、地表面にNaBr及びNaNO3を各125g/m2散布し、打ち込み式採土器(φ2~4cm)で1~2ヶ月おきに深さ1mまで10cmごとに採土し、水溶性陰イオンの移動を調査した。 2. 試坑調査による深さ15cmごとの液相率は、黒ボク土では深さ0~15cmが40%で、下層ほど高く75~90cmは66%であり、褐色低地土では0~45cmが15~18%、45~90cmが19~22%であった。0~1mの深さに保持されている水分量は、褐色低地土の180mmに対して、黒ボク土では2.9倍の530mmである。 3. Br及びNO3イオンは、黒ボク土では散布21日後に深さ0~30cmに、59日後に40~90cmに移動した。褐色低地土では、21日後に深さ0~50cmに、59日後には60cm以下に移動し、移動が速い(図1)。 4. Brイオン濃度が最も高かった深さを、Brイオンの移動した深さとした。NaBr散布29~49日後の調査において、Brイオンは黒ボク土では4回の平均で深さ20cmに、褐色低地土では7回の平均で深さ55cmに移動した(表1)。褐色低地土におけるBrイオンの移動距離は黒ボク土の2.5倍、液相率は1/2.4であり、Brイオンが移動した土層内の水分量は両土壌でほぼ等しく、Brイオンの移動が浸透水の移動を表すと判断される。 5. Brイオンが移動した土層内の水分量を降下浸透水量として求めた。降水量(x)と浸透水量(y)との関係は、大量の降雨があった期間などを除くと、黒ボク土ではy=0.65x-16.8、褐色低地土ではy=0.70 x+0.7の式で表された(図2)。これらの式の傾きから、1~2ヶ月の期間における浸透水量は、平均的には黒ボク土では降水量の約65%が、褐色低地土では約70%になると推定される。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 環境負荷を低減する施肥管理対策を立案する上で、浸透水中の硝酸態窒素濃度を推定する際に利用する。 2. 大量降雨では、表面流去が生じたり、亀裂における浸透水移動量が大きかったと考えられる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 施肥 モニタリング |