タイトル | 富山の清酒用花酵母の開発 |
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担当機関 | 富山食研 |
研究期間 | 2003~2007 |
研究担当者 |
中川秀幸 瀬智之 |
発行年度 | 2006 |
要約 | 地域特産物としての地酒のイメージアップを図るため、香味に優れた新規性のある清酒用酵母を富山の花から分離し育種を行い、その酵母の特徴を活かし、富山県や地域のイメージにマッチした清酒の製品化を図る。 |
キーワード | 清酒酵母、地域特産物、観光資源、酒造好適米、高山植物、チューリップ、椿 |
背景・ねらい | 酒類の多様化などにより、全国の清酒の消費量は年々減少しているが、辛口の酒として県内外の愛好家に親しまれている富山の酒も例外ではない。しかし、酒の個性化、差別化の進むなか、味や香りなどに新規な特徴を持った製品の売り上げは伸びている。そこで、地域特産物としての地酒のイメージアップを図るため、富山県内の豊かな自然や観光名所の様々な花から香味に優れた新規性のある清酒用酵母の分離と育種を行い、その酵母の特徴を活かし、富山県や地域のイメージにマッチした新しいタイプの清酒の製品化をめざす。 |
成果の内容・特徴 | 1. 富山県内各地の花から酵母を採取する。なお、分離源は、(1)立山国立公園弥陀ヶ原の高山植物52種、(2)砺波市のチューリップ公園等のチューリップ133種、(3)南砺市の井口椿公園の椿51種である(表1)。 2. これらの分離酵母を麹汁培地に入れ20~25℃で約2週間培養する。培養後、(1)エタノール生成能が高い、(2)酢酸エチル臭などの異臭が認められない、(3)他の醸造用酵母を殺してしまうキラー性を有しない、などを基準に繰り返し分離・選抜し、保存する。 3. 選抜した酵母を用いて小仕込み試験を実施し。得られる製成酒についてエタノール生成量、酸度、アミノ酸度を測定するとともに国税局鑑定官、酒造組合員など専門家による官能検査を行い、それぞれの分離源からアルコール生成能が比較的高く、香味に優れた酵母を選定する(図1、表2)。 4. 県内酒造メーカーにおいて、これらの酵母を用いた実用化仕込みを行う。 5. 高山植物から分離・選抜した酵母を用い、特別栽培米の雄町を原料に淡麗な味わいで軽快な吟醸香に優れた吟醸酒を製造し、商品化することが可能である(表3)。 6. 県花チューリップから分離・選抜した酵母を用い、県産酒造好適米の雄山錦など県産米100%を原料に、花の香りを持ち、日本酒のやわらかさと果実酒の爽やかな酸味を融合した純米吟醸酒を製造し、商品化することが可能である(表3)。 7. 椿の花から分離・選抜した酵母を用いて、県産山田錦を原料に椿の花様の甘い香りを有する純米吟醸酒を製造し、商品化することが可能である(表3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 地域特産物としての地酒および県内観光資源の両方の地域イメージの相乗効果により、地酒の販売促進と観光PRが共に一層期待できる。また、県産の酒造好適米の使用により、更に地域性が強調される。 2. これらの酵母の分離・選抜技術を応用し、さらに新規な分離源からの酵母の育種が可能である。 3. 分離した酵母はパン、食酢製造など他の食品にも利用が可能である。 4. 国立公園内でのサンプリングには、所轄官庁である森林管理署の許可を得て行うなど、公園の管理者や圃場の所有者の許可を得て行う必要がある。 5. 清酒等の酒類の醸造には、税務署の酒造免許が必要である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 育種 酒造好適米 チューリップ |