タイトル | 病害虫複合抵抗性を有し、良質・良食味の水稲新品種「むさしの14号」 |
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担当機関 | 埼玉農総研 |
研究期間 | 2001~2007 |
研究担当者 |
岡田雄二 戸倉一泰 荒川誠 斎藤孝一郎 重松統 小指美奈子 上野敏昭 新井守 新井登 石井博和 大岡直人 渡邉耕造 武井由美子 箕田豊尚 野田聡 |
発行年度 | 2007 |
要約 | 水稲「むさしの14号」は、埼玉県では中生の晩に属する粳種である。縞葉枯病抵抗性、穂いもち圃場抵抗性、ツマグロヨコバイ抵抗性を有し、6月下旬の麦あと栽培では「朝の光」並の多収である。また、千粒重は大きく、粒厚はやや厚い。 |
キーワード | 縞葉枯病、穂いもち、ツマグロヨコバイ、良食味、病害虫複合抵抗性 |
背景・ねらい | 本県における中生~中晩性品種の「あかね空」および「朝の光」は一定の評価を得ているが食味評価が低く、作付面積は年々減少傾向にある。一方、異品種混入により、今後の生産が難しくなった「アキニシキ」の後継品種の選定が急務となっている。このため、減農薬栽培が可能な病害虫への抵抗性有し、良質・良食味でこれら品種と同熟期の系統を育成することをねらいとした。 |
成果の内容・特徴 | 1. 「むさしの14号」は、縞葉枯病抵抗性・穂いもち圃場抵抗性・ツマグロヨコバイ抵抗性で極良食味の「愛知108号」と縞葉枯病抵抗性・穂いもち圃場抵抗性・ツマグロヨコバイ抵抗性・極良食味の「むさしの1号」(後の「彩のかがやき」)との交配組合せの後代から育成された系統である。 2. 「朝の光」に比べ、5月上~中旬移植では出穂期は同程度、成熟期は4日程度遅い。6月下旬移植では出穂期、成熟期は同程度の中生の晩である(表1)。 3. 「朝の光」に比べ、稈長は3~5cm短く、穂長は同等~やや長く、穂数はやや少ない中間型である。 4. 「朝の光」に比べ、収量性は5月上~中旬移植ではやや低収であるが、6月下旬移植は同程度である。 5. 「朝の光」に比べ、玄米千粒重は1g程度重く、粒厚はやや厚い。 6. いもち病真性抵抗性遺伝子型は「Pia、Pii」と推定され、葉いもち圃場抵抗性は「強」、穂いもち圃場抵抗性は抵抗性遺伝子「Pb1」を有すると推定され「強」である。縞葉枯病には「抵抗性」で抵抗性遺伝子「Stvb-i」を有すると推定される。ツマグロヨコバイには抵抗性である。白葉枯病には「中」である。穂発芽性は「やや難」である。 7. 玄米の外観品質は「朝の光」と同等。 8. 「朝の光」に比べ、玄米タンパク質は5月上~中旬移植ではやや低く、6月下旬移植では同程度。白米アミロースはやや低く、移植期が遅いと低くなる傾向がある。 9. 飯米は外観が優れ、6月下旬移植では「朝の光」に優り、「キヌヒカリ」並の良食味である(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 県内の「あかね空」、「朝の光」及び「アキニシキ」の後継品種としての普及が見込まれる。 2. 縞葉枯病、ツマグロヨコバイには抵抗性を有し、被害回避が期待できるが、これら以外の病害虫には適正な防除が必要である。 3. ツマグロヨコバイ抵抗性についてはバイオタイプの出現に留意する。 4. 穂いもちには、穂いもち圃場抵抗性遺伝子「Pb1」を有するが、本病に感染はするため(圃場抵抗性「強」)、多発生が予想される場合は防除を行う。 5. 耐倒伏性は「強」であるが、食味および品質の低下を避けるため、窒素肥料の多投入をしないよう留意する。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | 肥料 病害虫 いもち病 害虫 縞葉枯病 新品種 水稲 抵抗性 抵抗性遺伝子 農薬 品種 防除 良食味 |