タイトル | 長野県で発生した雑草イネの脱粒特性と脱粒籾の発芽能力 |
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担当機関 | 長野農事試 |
研究期間 | 2005~2006 |
研究担当者 |
細井淳 青木政晴 斎藤康一 酒井長雄(長野県農業技術課) 牛木純(中央農研) |
発行年度 | 2007 |
要約 | 長野県で発生した雑草イネ(トウコン)は、触診では出穂後約2週間目から脱粒する籾が確認され、自然脱粒は出穂後約2週間~1ヶ月の間に起こる。脱粒籾は80%以上の発芽能力を有する。よって、手取り除草は雑草イネの出穂後2週間以内に行う必要がある。 |
キーワード | 雑草イネ、脱粒性、発芽能力、手取り除草 |
背景・ねらい | 近年、長野県内の一部ではトウコンと呼ばれる脱粒性の高い赤米の雑草イネが混生する問題が生じている。現在、雑草イネは栽培イネとの間に選択性を持つ除草剤がないことから、手取り除草が最も重要な防除法となっている。手取り除草は、出穂前には栽培イネと雑草イネとの識別が困難であるため、穂の形態(ふ先色の有無)による識別が可能となる出穂期以降に行う必要がある。しかし、出穂後に手取り除草を実施してもすでに籾の一部が脱粒している場合が多く、防除効果が十分に得られていない。 本試験では、手取り除草の防除効果を向上させるため、長野県内より収集された雑草イネの脱粒に関する諸特性、および脱粒した籾の発芽能力について調査し、手取り除草の適切な実施時期を把握する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 代表的な雑草イネ6集団では、出穂後約2週間目より触診によって初めて脱粒が確認され、約3~4週間目に最も多く脱粒が起こる(表1)。 2. 出穂後約2週間目の穂の外観は、ほとんどの籾が緑色を帯びているものの、穂軸や枝梗の先端に着生した籾がわずかに黄化を始め、傾穂が始まっている(図1)。 3. 脱粒は1ヶ月程度にわたって継続し、経時的な積算脱粒籾率(穂の全籾数に対する脱粒した籾の合計数の割合)の変化は典型的なシグモイド曲線を描く(図2)。 4. 供試した雑草イネ18集団中の16集団では、圃場条件下で自然脱粒が初めて確認される日は集団ごとに異なるが、出穂後約2週間~1ヶ月の間に自然脱粒を開始する(表2)。 5. 代表的な雑草イネ6集団のしいなを除く脱粒籾には、脱粒した時期にかかわらず80%以上の発芽率を示す(図3)。 6. 以上の結果より、漏生や埋土種子の増加を防止するためには、手取り除草は雑草イネが脱粒を始める前の出穂後2週間以内に実施することが必要である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 雑草イネの効率的な手取り除草の実施基準に活用できる。 2. 雑草イネが激発している圃場では、プレチラクロールを含む初期剤とシメトリンを含む中期剤を組み合わせた除草剤の体系処理(平成14年度果情報)を行い、雑草イネの発生密度を充分に下げること。 3. 本成果は、宮島・高橋(1974)によって1971年~1972年に収集され、長野県農事試験場で増殖後保存されていた集団の一部と、牛木(2005)によって2002年に長野県内で収集され、中央農研センターで増殖後保存されていた集団の一部を供試して得た結果である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 雑草イネ 除草 除草剤 防除 |