タイトル |
凍結方法の改善による名古屋種胚盤葉細胞の融解後生存率の向上 |
担当機関 |
愛知農総試 |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
渡邉久子
長尾健二
中村明弘
近藤一
野田賢治
新實竜也(家畜改良セ岡崎牧場)
今井隆雪(家畜改良セ岡崎牧場)
田島慈恵(家畜改良セ岡崎牧場)
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発行年度 |
2008 |
要約 |
名古屋種胚盤葉細胞凍結の従来法に対し、トリプシン処理後のボルテックスミキサーによるフラッシングによる細胞解離と凍結溶液中FBSの80%への増量と凍結時の細胞高密度化(1胚/25μL)で、融解後における細胞の生存率が約25%から約50%に向上する。
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キーワード |
ニワトリ、胚盤葉細胞、凍結方法、生存率、名古屋種
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背景・ねらい |
名古屋種をはじめとする地域特産鶏の細胞レベルでの長期間保存の実用化を目指している。多分化能を有する胚盤葉細胞を凍結保存する方法は凍結精液による方法に比べ、理論上、迅速な個体復元が可能である。しかしこの方法は生殖系列キメラの作出が不可欠で、実用化のためには細胞の凍結融解後の生存性の確保と効率的な生殖系列キメラ個体作出方法の確立が必要である。名古屋種において、従来の凍結方法では融解後の胚盤葉細胞の生存率は30%程度しかないので、まず、この方法の改善により融解後における細胞の生存率を50%程度まで向上させる。
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成果の内容・特徴 |
- 名古屋種胚盤葉細胞の凍結において、従来法(図1)に対し、トリプシン処理後の胚盤葉細胞の解離方法をマイクロピペットによるピペッティングからボルッテックスミキサーのフラッシングに変更すると、凍結融解後における細胞の生存率が29.2%から50.8%に向上する傾向がある(n=3、5%水準で有意差なし)。
- 凍結溶液中の牛胎子血清(FBS)濃度を従来法の20%から50%、80%に上昇させると、融解後における細胞の生存率が向上する傾向があり、従来法の20%FBSで生存率27.8%に対して、50%FBSでは29.1%、80%FBSでは34.5%の生存率が得られる(n=3、有意差なし)。
- 凍結液量あたりの胚数を増やし細胞密度を10倍まで高くすると、融解後における細胞の生存率が高くなる傾向があり、従来法(2胚/500μL)の26.3%に対して、10胚/500μLで31.8%、20胚/500μLで44.2%になる(n=1)。また、1胚あたりの凍結液量を減らし細胞密度を高くしても同様の傾向があり、融解後における細胞の生存率は従来法の38.8%から、2胚/200μLで33.8%、2胚/50μLとなる(n=2、5%水準で有意差なし)。
- 以上のように凍結融解後の細胞の生存率を向上させる傾向がある、細胞の解離方法のボルテックスミキサーによるフラッシングへの変更、凍結溶液中のFBS濃度の80%への増量、凍結時の細胞高密度化(1胚/25μL)、を組み合わせた改良法(図1)で凍結を行うと、融解後における細胞の生存率は51.1%となり、従来法での25.4%から大幅に改善できる(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 名古屋種以外の特産鶏についても、同じ条件で高い生存性が得られるか確認する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
鶏
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