タイトル |
水耕養液中の高温性ピシウム属菌の選択的検出法 |
担当機関 |
岐阜農技セ |
研究期間 |
2005~2007 |
研究担当者 |
景山幸二(岐阜大)
渡辺秀樹
堀之内勇人
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発行年度 |
2008 |
要約 |
水耕養液中の高温性ピシウム属菌は、ベントグラス葉を用いた捕捉法と選択培地上での高温培養(38℃)を組み合わせることで、選択的に検出することができる。
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キーワード |
水耕栽培、高温性ピシウム属菌、Pythium aphanidermatum、P. myriotylum、P. helicoides、検出法
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背景・ねらい |
ピシウム属菌は国内で約30種類が知られており、野菜や花き類の養液栽培で被害が多発している。近年、高温性のピシウム属菌による被害が目立ってきており、防除対策を検討するために、施設内の病原菌の生態を明らかにする必要がある。そこで、多種類の糸状菌が混在する養液中から高温性ピシウム属菌のみを選択的に検出する手法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 各種の植物葉や種子を捕捉基質として、主要な高温性ピシウム属菌3種(Pythium aphanidermatum、P. myriotylum、P. helicoides)の遊走子を接種すると、ベントグラス葉が最も安定して高い捕捉能力が認められる(表1)。
- 3種の高温性ピシウム属菌を捕捉したベントグラス葉片を、ピシウム属菌の選択培地(AP2培地;Kageyama and Ui, 1980)に置床して38℃で培養すると、それぞれ捕捉した菌の分離率はほとんど低下しない。一方、38℃の培養条件下では、中温性菌である P. spinosum は全く分離されなくなる(図1)。
- ベントグラス葉は、5-7mmの切片を作成し、お茶パックの中に50片入れ、蒸気滅菌する。養液に沈めやすくするためにクリップを取り付けてトラップを作成し、養液中に浸漬する。浸漬後はトラップを回収し、選択培地上で葉片を培養する(図2)。
- 3種のピシウム属菌の場合は、38℃で培養すると旺盛な菌糸生育が認められる(15mm/24h)。菌種を判別するためには菌株の形態観察を行う必要があるが、培地上のベントグラス葉片を水に浮かべて20-25℃で培養することで、形態観察も可能である。
- ベントグラス葉トラップは、養液中の遊走子密度が4個/mlの場合は1日の設置で、4×10-2個/ml程度では7日間の設置により高感度に検出できる(データ省略)。
- 現地栽培施設の養液中に設置したトラップを回収し、葉片を選択培地に置床して25℃で培養すると、様々なピシウム属菌が分離されるが、38℃で培養すると高温性のピシウム属菌を選択的に分離できる(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本法は、養液中の高温性ピシウム属菌のモニタリング調査のほか、原水などからの検出にも利用可能である。
- PCNBを使用するAP2培地の代替として、近年開発されたNARM培地(Morita and Tojo, 2007)でも同様の結果が得られる。
- ベントグラス葉の入手が困難な場合、アサ種子やエゴマ種子などでも代用可能で、これらは鳥の餌としてホームセンター等で市販されている。特にエゴマ種子は培地へ置床する際の作業効率が良い。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
えごま
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水耕栽培
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養液栽培
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