タイトル | 中国中山間地域の二次林における牛道および採食樹種の特徴 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
井出保行 宮重俊一 高橋佳孝 佐藤節郎 四十万谷吉郎 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 二次林内に形成された牛道は、立木のない傾斜草地のそれに比べて、牛道の傾斜角が急になる傾向にある。二次林内では、可食域における樹葉の大部分が常緑広葉樹によって占められるが、主に採食されるのは蔓茎類を含む夏緑広葉樹である。樹葉は、常緑・夏緑の別を問わず、粗タンパク質およびリンの含有量が少ない。 |
キーワード | 永年草地・放牧、放牧飼養、二次林、牛道、採食植物、林内放牧 |
背景・ねらい | 中国中山間地域では、耕作放棄地などを活用した和牛の放牧が盛んに行われるようになった。しかし、放牧の対象となる耕作放棄地は面積1ha未満のものが多く、放牧安定化のためには林地の効果的な利用が望まれる。その場合、当該地域に広く分布する二次林が有望となるが、そこでの放牧に関する知見はほとんど得られていない。そこで、放牧牛による二次林の利用性を把握するため、林内に形成された牛道および採食樹種の特徴を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 調査した二次林は、マツ枯れ跡地に成立した10年生前後の林分で、平均樹高は2.44mである。立木密度は200本/100m2で、中国地方の代表的な二次林植生の一つであるアカマツ林(コバノミツバツツジ-アカマツ群集)の特徴を有する。 2. 二次林内に形成された牛道は、複雑な網目状を示し(図1)、立木のない傾斜草地のそれに比べて、牛道の傾斜角が急になる傾向にある(図2)。これらのことは、比較的高密度な樹木によって、等高線方向への移動が規制されたことに起因する。 3. 放牧牛は地上2mまでの高さで採食の98%を行うが、その空間には全樹葉量の29%が分布し、大部分は常緑広葉樹である(図3)。しかし、採食される樹葉の80%強は蔓茎類を含む夏緑広葉樹である(図4)。 4. 採食された樹葉の成分は、常緑・夏緑の別を問わず、一般牧草に比べて粗タンパク質およびリンの含有量が少ない(表1)。 5. 以上のことから、二次林内では、移動に多くの労力がかかる反面、実質的に利用可能な飼料(樹葉)が極めて少なく、その質もあまり高くないことがわかる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 上述した二次林の特徴を踏まえると、その利用に際しては、移動路確保のための除伐や、飼料構造改善のための対策(例えば、草地との組み合わせ利用)が必要になると考えられる。 2. 照葉樹林帯に位置する若齢二次林で得られた結果である。これとは林分構造が異なる二次林については、別に検討する必要がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
カテゴリ | 中山間地域 みつば |