タイトル | 損益分岐点からみた水稲作業受託料金設定支援システム |
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担当機関 | 奈良農技セ |
研究期間 | 2002~2002 |
研究担当者 |
平岡美紀 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 水稲作業受委託システムの導入検討時に、受託作業の損益分岐や、委託側の作業料金に対応する意向変化を組み入れながら作業料金設定を支援するツールを作成したので、これを用いて受託面積の変化が料金設定に及ぼす影響を計算できる。 |
キーワード | 水稲、作業受委託、作業料金 |
背景・ねらい | 遊休農地解消策の一つに集落を中心とする作業受委託による農地利用があるが、システムとして新たに導入を検討する場合、委託側は作業料金体系が、また受託側は受託農地の条件別面積や投資・労働に対する利益が、重要な判断基準になる。そこで、受託する農地の圃場条件とその面積が、作業料金にどのように影響するかを損益分岐点分析から簡単に計算できるツールを表計算ソフトで作成する。これを用いて作業料金のシミュレーションを行うことにより、双方の意向を取り入れながら作業料金の決定に役立てることができる。 |
成果の内容・特徴 | 1. 作業料金設定ツールの概要 作業ごとに委託農地面積を圃場の条件レベル別に集計し、標準レベルの農地面積に換算して損益分岐点とし、これに受託者が所有する機械に対応した作業経費から、損益分岐点時の作業料金を算出する(図1)。農地の条件は、圃場の作業性に応じて評価するが、AHP(階層分析法)を援用するため、地域の状況や評価者ごとに評価の重み付けを変化させることが可能である(表1)。この作業性評価(総合評価値)の差により数段階のレベルに分け、標準農地との料金格差を設定する(図2)。 受託者側は、作業に用いる機械の能力・価格・作業効率・燃料費等のランニングコスト、オペレータと作業補助者の労賃(時給)等のデータが必要である。なお、機械の作業効率、オペレータの従事可能時間、地域における作業可能期間から、受託上限を標準レベルの農地面積に換算して設定する。 システムの作成にはマイクロソフトエクセル2002を、AHPによる重要度等の計算には専修大学高萩栄一郎氏作成のVBAマクロを使用する。 2. シミュレーション結果概要 損益分岐点で計算するので、制約の範囲内で受託できる最大の面積を受けた場合、作業料金が最も低くなる。また、同じ面積を受けるなら、受託する圃場作業性の良否で料金も変わるが、以下に試算結果を示す。 田植え作業において、受託面積を500aと固定し、受託する圃場の作業性レベルの割合を変えて作業料金を算出する(図3)。最優良レベルの農地割合が10%から100%に変化すると、10a当たり作業料金が20,800円から18,500円へと11%低下する。集落内で農地利用の調整が実現し、作業性の良い農地での作業受委託が進むと、双方とも合意を得られる料金体系が実現可能である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 例に示した田植え以外の作業や、小麦大豆など転作作物の作業受委託にも応用できる。 2. 集落営農に対する行政支援策の策定基礎、農協などの農作業サービス提供事業者における料金設定の検討時などに活用できる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | コスト 小麦 水稲 大豆 |