タイトル | 生産者の自己評価による作業負担度を加味した家族労働費の算出 |
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担当機関 | 高知農技セ |
研究期間 | 2000~2001 |
研究担当者 |
玖波井邦昭 山西敏治 松島貴則(高知大学) |
発行年度 | 2002 |
要約 | 作業負担の強さや作業の難易度等を作業別に時給単価(仮想労賃)に置き換えて生産者から聞き取ることで、作業負担度の判定・評価ができる。また、この作業別仮想労賃単価をもとに家族労働費を算出すれば、作業負担度を生産費に反映させることができる。 |
背景・ねらい | 新技術を導入すると、収益、費用、作業時間などが変化するだけでなく、作業内容が質的に変化することも多い。このような作業内容の質的な変化を客観的にとらえるため、主要作業について心拍計による測定を行い、その測定値を作業強度別賃金に換算する試みもなされている。しかし、その方法では測定値を加重賃金に換算する時点において、分析者による人為的判断を介在させざるを得ないという限界がある。 そこで、施設ナス栽培農家の経営主に対して面接調査を行い、主観的作業負担度を作業別に時間当たりの労賃(以下仮想労賃)として自己評価させ、作業負担度の判定に用いる。さらに、その仮想労賃をもとに家族労働費を算出し、「作業負担度を加味した家族労働費」、生産費として経済性評価に適用する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 施設ナス栽培における各作業について、作業負担の強さや作業の難易度等を総合的に判断したうえで仮想労賃に置き換え、生産者自身に自己評価(基準額として収穫作業労賃を800円として提示)させる。さらに基準額との差を確認するため、収穫作業の仮想労賃を別項目として聞き取り、基準額との差に基づき作業別の仮想労賃を補正して仮想労賃補正額とする。その結果をみると、日常作業の中では農薬散布とホルモン処理の作業負担度が高いことがわかる。このように仮想労賃を作業負担度の判定に用いることが可能である(表1)。 2. 作業ごとに仮想労賃補正額に作業時間を乗じて、「作業負担度を加味した家族労働費」を算出する。この額と総作業時間に単価(収穫仮想労賃を適用)を乗じた「作業負担度を加味しない家族労働費」との違いを、花粉媒介昆虫(マルハナバチ)と天敵を用いた栽培技術(以下新技術)体系と慣行体系のそれぞれ10a当たりについて比較すると、新技術体系では、「作業負担度を加味しない家族労働費」に比べ4,702円低くなるが、慣行体系では79,136円高くなる。その結果、「作業負担度を加味した家族労働費」では、83,838円が軽労化効果として評価されたことになる。このように仮想労賃をもとに家族労働費を算出することで、作業時間では測定できない軽労化の効果を生産費に反映させることが可能である(表2、3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 品目を問わず、新技術の導入効果が作業負担の変化に強く現れる場合などにおいて、技術間の作業負担度の違いを評価する方法として有効である。 2. 作業の質的な違いにより直接比較が困難な作業間の相対的な負担度比較にも適用できる。 3. 本調査では、男女、年齢、経験年数等による仮想労賃の違いについては考慮していない。 4. 自己経営や周辺農家の雇用労賃相場により、仮想労賃にバイアスが発生する可能性がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 経営管理 軽労化 栽培技術 なす 農薬 評価基準 マルハナバチ |