ブドウの環境保全型栽培のための簡易かん水施肥装置

タイトル ブドウの環境保全型栽培のための簡易かん水施肥装置
担当機関 島根農試
研究期間 2000~2003
研究担当者 伊藤淳次
荒木卓久
朝木隆行
岡本 敏
発行年度 2003
要約 ハウス加温栽培の砂質ブドウ園において、肥効調節型肥料とかん水タイマーを組み合わせた安価なかん水施肥装置を用いることで、施肥量やかん水量を1/2以下に減らしても慣行栽培と同等の収量、品質が得られ、硝酸性窒素の流出量を大幅に削減できる。
キーワード ブドウ「デラウェア」、ハウス加温栽培、かん水施肥、硝酸性窒素
背景・ねらい 島根県におけるブドウの栽培面積は約350haであり、そのうち65%で加温栽培が行われている。産地の多くが地力の低い砂丘未熟土であることや、早期出荷のため加温開始を前進させた作型が増加したため、樹勢の衰弱による収量・品質の低下がみられる。その対策として、窒素肥料の増施や加温開始後の地温上昇を早めるための温湯かん水が行われており、地下水の硝酸性窒素濃度の上昇が懸念される。そこで、簡易で自作可能なかん水施肥装置を用いて施肥効率を向上させ、硝酸性窒素の流出量を削減する。
成果の内容・特徴
  1. ブドウ樹の株元から約60cmの高さに肥効調節型肥料を充填した容器を吊し、容器内へかん水タイマーによって給水間隔、時間を制御した水を供給する。肥料容器内を逆浸透する間に肥料成分が溶け込んだ養液は、チューブを通じて、株を中心とする約60cmの円周上に均等に設置した8個の滴下ニップルから土壌表面に滴下する(図1)。
  2. 本装置によるかん水施肥は以下を標準仕様とする。1樹当たり1kgの被覆燐硝安加里424、40日溶出型を使用し、温湯かん水終了後から果粒肥大期までと収穫後は2日に1回、果粒肥大期から収穫期までは毎日、7時間(液量は約20L/樹)作動させる。
  3. 本装置を砂質土壌の早期加温ブドウ栽培ハウスに設置し、「デラウェア」(3~5年生樹)を栽培すると、慣行施肥に比べて根量が少なく葉柄の硝酸濃度はやや低いものの、適度の葉面積が確保され、慣行栽培とほぼ同等の収量、品質が得られる(表1、2)。
  4. かん水施肥栽培における窒素施肥量は10a(植栽本数40本)当たり5.6kgで、県栽培指針の20kgと比較すると1/3以下である。また、総かん水量は慣行栽培の半量以下であり、肥料成分の地下水への流出を大幅に削減できる(表3)。主生育期間中の浸透水の平均硝酸性窒素濃度は、慣行栽培の3.7mgL-1と1/5以下である。
  5. 装置はかん水タイマー、ろ過装置等の市販の園芸用資材や使用済みペットボトルを組み合わせて自作が可能である。肥料費を含めた経費は10a当たり約15万円であり、市販のかん水施肥装置に比べると1/5以下である。

成果の活用面・留意点
  1. 本技術は滴下した養液が浸透しやすい砂丘未熟土、岩屑土や黒ボク土等の砂質または壌質土壌に適用できる。肥料の量は土壌の種類、作型、樹齢等によって調整する。
  2. 土壌改良は樹を中心とする半径1.5mの円内で行い、養液の滴下部付近に根域を集中させる。そのうち有機物の施用は円内を8等分した扇形の対角する2つの部分を組にして順次行い、4年で1巡する。
  3. 40日溶出型の肥料は7~8ヶ月で成分の溶出が完了する。使用済み肥料(被覆樹脂)は天日乾燥等によって水分を除いた後、地域のゴミ処理法に従って処分する。
  4. 三要素以外の肥料および堆肥等の有機物は慣行どおり施用する。


図表1 219607-1.jpg
図表2 219607-2.jpg
図表3 219607-3.jpg
図表4 219607-4.jpg
カテゴリ 肥料 乾燥 出荷調整 施肥 土壌改良 ぶどう

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