栄養繁殖によるトマト苗大量増殖のための不定芽採取法の確立と生産性の確認

タイトル 栄養繁殖によるトマト苗大量増殖のための不定芽採取法の確立と生産性の確認
担当機関 奈良県農業技術センター
研究期間 2002~2003
研究担当者 西本登志
吉村あみ
信岡 尚
発行年度 2003
要約 生長点全摘心不定芽発生法を用いてトマトの栄養繁殖苗を増殖する場合、高温期には低葉位で主枝摘心を行い総側枝数を5以下に制限し、他の時期にはこれより側枝数を増やすことで増殖効率が向上する。栄養繁殖苗と実生苗の間には形質・収量において大きな差は認められない。
キーワード トマト、栄養繁殖、不定芽、苗生産
背景・ねらい トマトの株に存在する生長点を全て摘心すると切断面に生じたカルスから不定芽が発生する。この不定芽を採取し挿し芽することで苗を得る増殖法は、種子繁殖が困難な系統・品種の生産苗育成やF1育種における親系統の増殖の手段として有効と考えられるため、苗増殖を効率的に行うための母株の仕立て法を確立し、また、不定芽由来の栄養繁殖苗の遺伝的変異と生産性を確認する。
成果の内容・特徴
  1. トマトの生長点全摘心不定芽発生法では、主枝を摘心するとともに、主枝の葉腋に発生する側枝を基部から2cm程度残して摘心し、切断面に生じたカルスから不定芽を発生させる。採取する不定芽は草丈5cm以上または葉数3枚以上とすると挿し芽後の発根率が高くなり、発根後も正常に生育する(図1)。
  2. 高温期に摘心を行う場合には母株の草勢が強くなり、欠乏症と考えられる心枯れが不定芽に生じやすくなるため、低い葉位で主枝を摘心し、さらに総側枝数は5以下に制限する(図2)。また、その他の時期にはこれより側枝数を増やすことで増殖効率が向上する(図3)。
  3. 不定芽由来の栄養繁殖苗と実生苗の間には大きな形質差が認められないことから、不定芽における遺伝的変異は生じにくいと考えられる(表1)。
  4. 不定芽由来の栄養繁殖苗を生産苗に用いた場合、実生苗と比較し収量において大きな差は認められない(表1)。

成果の活用面・留意点
  1. 実用上の遺伝的変異が確認されなかったことから、不定芽採取による増殖法は優良変異個体選抜後の増殖やF1育種における親系統の増殖に利用することができる。
  2. 不定芽採取による増殖法は種子繁殖が困難な系統・品種の生産苗育成に利用することができる。
  3. 側枝の生長点を摘除する際には、基部から約2cm残して摘心する。
  4. 高温期に主枝を摘心すると増殖効率が低下する。
  5. サビダニ等の害虫やウイルス病が母株に発生すると、本圃でも多発する恐れがある。

図表1 219666-1.jpg
図表2 219666-2.jpg
図表3 219666-3.jpg
図表4 219666-4.jpg
カテゴリ 育種 害虫 トマト 繁殖性改善 品種

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