周産期乳牛へのバイパスコリンおよび液状カルシウムの給与と分娩後の繁殖機能

タイトル 周産期乳牛へのバイパスコリンおよび液状カルシウムの給与と分娩後の繁殖機能
担当機関 大阪食とみどり技セ
研究期間 2001~2003
研究担当者 笠井浩司
出雲章久
発行年度 2003
要約 周産期乳牛にバイパスコリンを給与することで分娩後の栄養状態が改善され、卵巣機能の再始動が早まる。また、分娩直後、翌日および30日後に液状カルシウム製剤を給与することにより胎盤停滞の発生が減り、子宮形態の回復が早まる。
キーワード 乳用牛、周産期、バイパスコリン、液状カルシウム
背景・ねらい 大阪府内酪農家の牛群は分娩後の発情回帰が遅く空胎期間の長いものが多い。そのため胚移植を導入すると、受胎までの期間が一層長くなることが懸念され、それが酪農家への胚移植の普及・定着を遅らせている。そこで分娩後早期の移植実施を可能にし、空胎期間を短縮することを目的として、受胚牛群の栄養状態改善と繁殖機能回復を促進することを試みた。5戸の酪農家において、産後の初回交配に胚移植を予定している妊娠牛に対し、脂質代謝促進による栄養状態改善効果が期待されるバイパスコリン製剤や、子宮機能回復に効果が期待される液状カルシウム製剤を給与し、その効果を調べた。
成果の内容・特徴
  1. 分娩前20日から分娩後80日までバイパスコリン60g/日/頭を給与した群(n=13)では、非給与の対照群(n=11)に比べ、分娩後の血中総コレステロール値の上昇(図1)や卵巣の再始動(分娩後15、30、45、60日での触診で、明瞭な卵胞または黄体が確認されたもの:図2)が早く、初回交配までの日数も90.8±12.1日で対照群の
    114.7±18.9日より短い(有意差はなし)。
  2. 分娩直後、翌日および分娩後30日の3回、液状カルシウム製剤500ml(Ca 25g)を給 与した群(n=21)の胎盤停滞発生率は9.5%で、非給与の対照群(n=13)の値30.8%に比べ、有意に低い。また、分娩後、子宮形態の回復(分娩後15、30、45、60日に触診・内診により判定)に30日以上要したものの割合も、カルシウム給与群では14.3%
    と低く、対照群の値38.5%との間に有意差が認められる。
  3. バイパスコリン給与群、液状カルシウム給与群とも、産後初回交配に実施した胚移植の受胎率そのものについては、各々の対照群との間に差は認められないが、バイパスコリン給与群では初回交配までの日数が短いため、最終的な受胎までの日数が123.3±15.4
    日で、対照群の152.4±21.6日に比べ短くなっている(有意差はなし)。

成果の活用面・留意点
  1. 本試験では、バイパスコリン給与群において、産後の栄養状態の指標となる血中総コレステロール値の上昇が早く、繁殖成績にも改善傾向が見られるが、この結果がバイパスコリンの効果であるとは証明できていない。血中成分の脂質代謝関連項目の比較を検討したい。
  2. バイパスコリンは高泌乳牛の分娩後の栄養状態改善、乳量増加の目的でも用いられているが、比較的高価なため、牛群の産乳能力を考慮し、基本的な飼養管理の適正化を行った上で必要性を検討して用いることが望ましい。
  3. 液状カルシウム給与群では、胎盤停滞および子宮形態回復遅延の発生が少ない結果となったが、これについても、カルシウム摂取の効果をより直接的に示すことを検討したい。

図表1 219729-1.jpg
図表2 219729-2.jpg
カテゴリ 飼育技術 乳牛 繁殖性改善

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