タイトル |
RT-LAMPによる数種作物からのトマト黄化えそウイルス(TSWV)の検出 |
担当機関 |
広島農技セ |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
松浦昌平
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発行年度 |
2004 |
要約 |
TSWVのNSm遺伝子領域から設計したプライマーを用いたRT-LAMPを行うことで、キク、トマト、ピーマンから、ウイルス核酸の増幅による簡易かつ迅速・高感度なTSWVの診断が可能である。
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キーワード |
TSWV、RT-LAMP、キク、トマト、ピーマン、迅速診断
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背景・ねらい |
広島県では、媒介虫ミカンキイロアザミウマの分布拡大に伴い、キクを始め各種作物でTSWVの被害が発生している。TSWVの高精度の診断には、抗体を用いたELISAやウイルス核酸の増幅反応によるRT-PCR法が行われているが、検定に特殊な機材や時間を要する。LAMP法はNotomiら(2000)によって開発された新しい遺伝子増幅技術で、高い特異性と迅速性から、種々病原体の検出に利用され始めている。そこで、TSWVの感染対象となる主要な農作物からのRT-LAMP法によるTSWVの診断技術を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- LAMPプライマーはTSWV M RNAのNSm遺伝子領域の塩基配列情報に基づき、TSWVNSm-F3(5´-F3-3´)、TSWVNSm-FIP(5´-F1c-F2-3´)、TSWVNSm-BIP(5´-B1c-B2-3´)、TSWVNSm-B3(5´-B3-3´)の4種のLAMPプライマーを設計し(図1)、増幅領域は152bpとする。なおF3、 F2、 B2、 B3の3´末端とF1c、B1cの5´末端6塩基に変異部分が含まれず、増幅領域内に制限酵素サイトHinfIおよびBsmIを含むようにする(図1)。
- 凍結保存(-80℃)した各作物から総RNAを抽出し[SV Total RNA Isolation systemR、(抽出時間約1時間)またはAquaPure RNA Isolation KitR、(抽出時間約30分)などを利用]、逆転写酵素を加え、LAMP法DNA増幅試薬キットRにより63℃、1時間反応させる。
- TSWV発病キク、トマト、ピーマンからRT-LAMPによる増幅遺伝子が認められ、一方、いずれの植物の健全葉からも増幅遺伝子は認められない。さらに、近縁種のINSV発病インパチェンスから増幅遺伝子は認められない(図2)。
- RT-LAMP産物を制限酵素処理すると、BsmIで210、219bp、HinfIで159bpのDNA断片に収斂されることから、RT-LAMP増幅産物はNSm遺伝子由来である(図3)。
- RT-LAMP副産物の白濁を利用した検出方法とTSWVモノクローナル抗体を用いたDAS-ELISAの検出感度を、キク感染葉を健全葉で段階希釈して検討したところ、モノクローナル抗体を用いたDAS-ELISAではキク感染植物組織の0.75mg相当まで検出できたのに対し、RT-LAMPでは0.03mg相当まで検出でき、RT-LAMPの検出感度はDAS-ELISAのそれよりも約1オーダー高いものと判断される(図4)。
- 以上から、試薬類と恒温槽の装備で、RT-LAMPを利用した核酸の増幅による簡易かつ迅速・高感度なTSWVの診断が可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- キクでは水やTE緩衝液を用いた簡易抽出による核酸を用いた場合、検出が不安定であるので,核酸抽出には市販のキットを使うのが良い。
- 遺伝子増幅量が膨大であるので、コンタミネーション防止のためLAMP増幅遺伝子産物の蓋は開けずに、増幅副産物による白濁(目視)で判定するのがよい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
インパチェンス
きく
診断技術
トマト
ピーマン
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