タイトル |
茶葉抽出滓等有機物添加が土壌中無機態窒素に及ぼす影響 |
担当機関 |
和歌山県農総セ農試 |
研究期間 |
2001~2004 |
研究担当者 |
森下年起
藪野佳寿郎
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発行年度 |
2004 |
要約 |
茶葉抽出滓類はいずれも硝酸態窒素を取り込み、その量は炭素1g当たり10~12mgとほぼ一定である。窒素含量が多くC/N比が低い煎茶滓等は、ウーロン茶滓に比べて茶滓由来の窒素無機化量が多いため土壌中無機態窒素の回復は速い。
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キーワード |
茶葉抽出滓類、硝酸態窒素、窒素取り込み、無機化
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背景・ねらい |
施設栽培土壌では、硝酸態窒素の過剰集積が多くみられ地下水汚染が懸念されている。有機物の窒素取り込み機能を利用した硝酸態窒素の低減に、ウーロン茶抽出滓(以下ウーロン茶滓)が利用できる。しかし、食品加工場からはウーロン茶滓以外にも煎茶等の様々な抽出滓が排出され有効利用が望まれている。そこで、煎茶滓等様々な有機物の窒素取り込み能力の評価と取り込まれた窒素の無機化についてインキュベート試験により検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 茶葉抽出滓類(ウーロン茶、煎茶、紅茶)を土壌に添加した場合、無機態窒素はいずれも30℃条件下で添加3日後に最も少なくなり硝酸態窒素の取り込みが見られる。その量は、炭素1g当たり10.3~11.8mgとほぼ一定である(表1)。
- 煎茶及び紅茶滓は、土壌中硝酸態窒素30mg/100g、茶滓添加量が炭素2g/100gの場合、両茶滓とも添加7日後に、土壌中無機態窒素は元のレベルに回復する。両茶滓は、全窒素及び熱水可溶性窒素含量が高くC/N比が低いことから、アンモニア化成が速やかに起こる(表1、2)。
- 麦茶滓は、窒素取り込み量が炭素1g当たり15.5mgと茶葉抽出滓類に比べて多い。また、熱水可溶性有機物炭素が多く、添加直後から多くの窒素を取り込む(表1、2)。
- コーヒー滓は、硝酸態窒素の取り込みが長期間継続し、アンモニア化成もほとんどみられない(表1)。
- 煎茶、紅茶滓はポリフェノール含量が多いものの両茶滓の窒素取り込み量はウーロン茶滓と同等であり、ポリフェノールが窒素の有機化に及ぼす影響は見られない(表1、2)。
- ウーロン茶滓、煎茶滓の添加後、土壌中無機態窒素のうち添加前の硝酸に由来する窒素は同様に増加することから、両茶滓に取り込まれた窒素の無機化パターンはほぼ同じである。煎茶滓添加後の土壌中無機態窒素の著しい増加は茶滓由来窒素の増加に起因する(図1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 煎茶及び紅茶滓は茶滓由来窒素の無機化量が多いため、土壌中硝酸態窒素の低減に利用するのではなく、有機質肥料的な利用法が適する。
- 土壌水分が最大容水量の60%の場合に茶滓添加による硝酸態窒素の脱窒はほとんどないが、土壌水分が最大容水量と多い場合には、茶滓に取り込まれた以外の硝酸態窒素は脱窒する。
- 有機物添加における窒素の有機化、無機化は温度の影響が大きいと考えられるため、反応速度論的解析法を用いた有機化、無機化パターンの推定等を行う必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
土づくり
肥料
加工
施設栽培
茶
麦茶
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