タイトル |
サル・シカの冬期のエサ源となる緑草帯の形成とその抑制法 |
担当機関 |
奈良農技センター |
研究期間 |
2002~2004 |
研究担当者 |
(森林保全課)竹中勲(畜技セ)
井上雅央
山田彩(京大霊長研)
室山泰之
米田健一
國本佳範(農技セ)藤平拓志
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発行年度 |
2004 |
要約 |
サルやシカのエサ量が最も減少する冬期に、集落の耕作地やのり面、集落に近い林道の路肩などに、豊富な緑草帯が形成される。明確な緑草帯が形成されるのは、前年秋期に、除草、耕耘、稲刈りなどの最終作業が実施された場合に限られており、この時期の除草等を必要最小限とすることや、12月まで水田の耕起を手控えることで、厳冬期のエサ源を大幅に減少させることが可能となる。
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キーワード |
サル、シカ、冬期餌源、緑草帯、管理作業、作業形態
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背景・ねらい |
サルやシカなどの野生獣にとって、厳冬期の餌量の激減は個体数増加の大きな抑制要因である。しかし、集落には厳冬期にも豊富な緑草帯が形成される。この緑草帯の存在がサル、シカの冬期の個体数維持の一因であると判断された。そこで、その形成条件を解明し、その結果をもとに省力的で緑草帯の出現しにくい雑草管理手法を提案する。
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成果の内容・特徴 |
- 集落周辺の草地は枯死草に覆われる枯草帯、緑草が繁茂する緑草帯、表土が露出する裸地帯に大別される3形態が存在するが、集落から離れた山岳地域ではほとんどが枯草帯で、緑草帯は林道路肩部などに限られる。
- 果樹園などの畑地や畦畔、道路のり面などで、1~2月に明確な緑草帯が形成されるのは、前年秋(9月~11月上旬)に最終の管理作業が実施された場合で、10月上中旬に管理作業が行われた例では2月の生草重が2.5t/10aに達した。これに対して8月までに管理作業が実施された場合には枯草帯が、また、11月下旬~12月に管理作業が実施された場合は裸地帯で推移することが多い。(表1)
- 緑草帯が形成される管理作業は、モア類、刈払い機(金属刃またはヒモ式)、鎌などによる除草作業のほか、トラクター、耕耘機、鍬などによる表土耕起、コンバインや鎌による稲刈り、鍬などによる空き地や墓地の草削りと多岐にわたる。(表1)
- 水田も、稲刈り作業が行われた場合、切り株から再生したイネ茎葉は枯死するものの、株間でスズメノカタビラ、タネツケバナなどの緑草帯となり、稲刈り直後に耕起が行われた場合はレンゲ、ホトケノザ、イネ科牧草などが繁茂する。(表1)
- 刈り払い機は鎌と比較して著しく作業効率が高く(表2)、不必要と判断される土地まで刈り払い作業が拡大される傾向が認められる。
- 秋期の草地管理は、果樹や水稲の収穫作業の利便性を確保するなど明確な目的で行われる作業も多いが、近所の作業につられるなど、必ずしもこの時期に必要としない例や、表2のとおり高性能刈払い機の普及から作業面積を拡大してしまう例などが多い。
- 以上の結果から、不要な管理作業を省き、必要な作業であっても体系的な作業計画の改善を行うことで、秋の管理作業を必要最小限にとどめることで、エサ源としての緑草帯の形成を抑制することが可能となる。(表3)
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成果の活用面・留意点 |
- 緑草帯形成条件は、標高や積雪に影響されるため、作業計画の改善はその地域での検 証作業に基づいて実施する。
- 管理放棄すれば緑草地形成はないが、恰好の潜み場となるため最低限の管理は必要。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
雑草
シカ
除草
水田
れんげ
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