タイトル |
ヒノキ花粉飛散数を利用した果樹カメムシ類のカキ果実の被害予測 |
担当機関 |
和歌山農水総技センター果試かき |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
榎本雅夫(日本赤十字社和歌山医療センター)
森下正彦
東浦裕之(伊都地域農業改良普及センター)
南方高志
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発行年度 |
2004 |
要約 |
ヒノキ花粉の飛散数比(当年/前年)が低いほど、チャバネアオカメムシなど果樹カメムシ類のカキ園への飛来時期が早まり、被害も多い。またヒノキ球果における幼虫数が減少し始めるとカキ園での被害増加の危険性が高いと予想される。
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キーワード |
果樹カメムシ類、カキの果実被害、ヒノキ花粉、花粉飛散数比、幼虫密度
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背景・ねらい |
チャバネアオカメムシなど果樹カメムシ類はスギ・ヒノキ球果で増殖することから、球果着生量の豊凶がカメムシ類の発生量に大きく影響する。しかし、球果着生量の正確な計測が困難なことから、球果量の代わりにヒノキ花粉飛散数(年間総数)を用いて防除開始時期と果実被害を予測し、防除対策に役立てる。
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成果の内容・特徴 |
- ヒノキ花粉の飛散数と果樹カメムシ類によるカキ(富有)の果実被害の年次変動は大きい(図1)。
- ヒノキ球果が果樹カメムシ類の餌として利用できる期間は、カメムシの越冬成虫数と当年の球果量の相対的な関係によって決まり、カメムシは摂食により球果が餌として不適になるとヒノキを離脱して果樹園に飛来する。前年の球果量(花粉飛散数)に比例し てカメムシが増殖したと仮定すると、「カメムシの越冬成虫数と球果量の相対的な関係」は、花粉飛散数比(当年/前年)で表現される。
- カキ(富有)の被害果率は当年の花粉飛散数とは相関が低いが(r=-0.6123, n.s.)、 花粉飛散数比とは相関が高い(r=-0.7076, p0.05)(図2)。また、花粉飛散数比が低いほど被害増加時期(被害果率が7.5%を越える時期)が早まる(図3)。
- 過去7年間で、ヒノキ球果における幼虫密度が9月下旬まで高かった2001年と2003年は果実被害が少なく、早期に減少した2002年と2004年は被害が多かった(図4)。球果で幼虫密度が減少した後でカキの果実被害が増加することから、幼虫密度の推移も果実被害の予測に活用できる。
- したがって、1)花粉飛散数比が小さい年は被害増加時期が早いと判断でき、被害増加時期を目安にカキ園内を見回り、カメムシの成虫や被害を認めたら、防除を開始する。2)月以降はヒノキ球果の幼虫数の推移にも注目し、幼虫数が減少すれば、成虫が飛来して被害増加の危険性が高いと判断できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 花粉飛散数は各地の病院(和歌山県では日本赤十字社和歌山医療センター)で測定さ れているが、ヒノキよりもスギで花粉飛散数が観測されている地域が多い。両者はほぼ同じパターンで年次変動しているので、ヒノキのデータが得られない場合は、スギ花粉飛散数で代用する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
かき
カメムシ
防除
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