タイトル |
ナシで初めて確認されたヒメボクトウの発生とその被害 |
担当機関 |
徳島農林水産総技セ |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
河野由希
中西友章
辻雅人
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発行年度 |
2004 |
要約 |
2001年6月に徳島県内のナシ産地でヒメボクトウCossus insularis(Staudinger)による被害を初めて確認した。幼虫が集団で穿孔食入するため、被害樹は衰弱し、枯死に至る。羽化は6月中旬~8月中旬にみられ、7月上中旬をピークとする一山型の消長である。
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キーワード |
ナシ、ヒメボクトウ、被害、羽化消長
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背景・ねらい |
近年、ナシ産地で幼虫が集団で枝幹にせん孔食害し、衰弱、枯死させる被害が相次ぎ問題となっている。しかし、ナシではこのような事例は過去に報告がない。そこで、加害種を同定するとともに、ナシ園における本種の被害実態を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 加害種はボクトウガ科、ヒメボクトウ Cossus insularis(Staudinger)であった(図2、3、独立行政法人農業環境技術研究所昆虫分類研究室 吉松慎一主任研究官 同定)。
- 本種によるナシの被害は、2001年6月に徳島県鳴門市大麻町および板野郡松茂町のナシ園で初めて確認された。
- 被害は直径2cm程度の側枝から直径10cmを越える主枝まで見られ、中心部の木質部まで縦横に穿孔食害するのが特徴的である(図1)。また、枝幹部から木屑の排出と樹液の滲出が見られ,そこからは樹液が発酵したような異臭が発生する。
- 幼虫はイモ虫状で赤紫色を呈し、集団で穿孔食害している(図2)。1カ所の被害部位には同程度の体長の幼虫が20~30頭(多い場合は100頭以上)寄生していることがある。
- ナシ樹内で体長約1cm~4cmの幼虫で越冬する。樹幹内で蛹化し、羽化は6月中旬~8月中旬にみられ、7月上中旬をピークとする一山型の消長である(図4)。
- 羽化後の脱出孔には蛹殻が半身を乗り出した格好で残され、コスカシバの様子に似ている。
- 多発生地域で被害実態調査を行った結果、“幸水”園の85.1%,“豊水”園の55.6%で被害の発生が見られ、ヒメボクトウの加害が広範囲にわたることが確認された。また、豊水より幸水に被害が多い傾向にある(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本種による被害は、木屑の排出、樹液の滲出、気温が高いと発酵したような異臭がするなどの特徴から早期発見が可能である。
- ナシの老木では腐朽した材部にアリ類が食入し、木屑を排出することがあるが、樹液の滲出はなく、異臭もしないため、本種の被害と区別できる。
- ヤナギ類やポプラに寄生するので、周辺のこれらの植物での寄生状況に注意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
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