タイトル |
試食がブドウ購入価格の消費者心理に与える影響 |
担当機関 |
岡山農総セ |
研究期間 |
2002~2004 |
研究担当者 |
山本晃郎
小野俊朗
藤原 聡(果樹研究室)
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発行年度 |
2004 |
要約 |
ブドウの試食は、家庭消費用に購入する場合に価格面で消費者心理を数~11%程度押し上げる効果があり、特に都市部で有効な販売促進手段になる。しかし、この効果は食味評価が高い場合に限られ、そうでない場合は逆に数%程度押し下げる危険性をもつ。
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キーワード |
ブドウ、試食、購入価格、販売促進、消費者心理、食味評価
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背景・ねらい |
果実販売価格の低下によって果樹産地の活力や担い手の生産意欲の低下が懸念されるなかで果物の消費量は減少しており、産地間競争が激化している。そのため、産地では消費ニーズを的確に捉えたうえでの有利販売に向けた戦略策定が重要になっている。 こうしたなかで、ブドウ「マスカット」と「ピオーネ」の家庭消費用400g入りパックの購入に対する消費者への価格受容性調査から、試食がブドウの購入価格に対する消費者心理に与える影響を明らかにし、販売推進上の参考に資する。なお、消費者心理に与える影響は、図1に示す「価格感度の帯」の4つの閾値の把握によって行う。
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成果の内容・特徴 |
- 試食に供したブドウの糖度はマスカットが17.3~21.0度、ピオーネが17.9~18.2度であり、県内で定める出荷基準を満たすが、これらに対する品質評価は総じて高い(表1)。また、試食前に購入することを想定して回答した価格を試食によって訂正・値上げした消費者が、両ブドウとも約半数を占める(図2)。
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家庭消費用ブドウの購入価格に対する消費者心理は居住地で異なる。試食前の消費者心理では、県内の消費者がマスカットは562円、ピオーネは548円をこえると「高い」と感じはじめるのに対して、関西や関東の消費者はマスカットは700~872円、ピオーネは601~721円をこえないと「高い」とは感じはじめない。また、「高すぎる」と感じはじめる価格も県内よりも県外の消費者、特に関東の消費者で高い傾向にある(表2)。
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試食後の購入価格に対する消費者心理の変化をみると、「高い」あるいは「高すぎる」と感じはじめる価格は、居住地に関係なく両ブドウともに上昇し、その上昇幅は「高い」と感じはじめる価格で3.9~9.0%、「高すぎる」と感じはじめる価格で3.3~9.1%である。また、居住地別には、県内よりも県外の消費者で上昇幅が大きい(表2)。
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食味評価別に変化をみると、高い評価の消費者ほど試食後の価格の上昇幅が大きい。「高い」あるいは「高すぎる」と感じはじめる価格は、「良い」と評価した消費者の上昇幅が約5%であるのに対して、「非常に良い」と評価した消費者のそれは約11%である(表3)。
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一方、「(必ずしもマイナス評価ではない)どちらでもない」と評価した消費者は価格を下げる傾向にあり、その下げ幅は「高い」あるいは「高すぎる」と感じはじめる価格で4~6%である(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 消費者の試食評価や購入価格に対する心理は、地域性だけでなく年齢や所得水準、各消費者の嗜好性やそのブドウへの慣れ親しみの程度等によっても異なる可能性があり、試食効果もそれだけ異なると考えられる。そのため、具体的な販売行動や価格設定等は、実際の販売先やそこでの中心的な購入者となる消費者層に調査を絞り込んだうえでの結果をもとに行うことが必要である。
- 「試食用には出荷規格からはずれたものでもよい」とする考え方は、試食販売をすすめるうえで厳禁であることを示す。そのため、販売用ブドウと同等の品質の良いブドウを今後とも試食用にも提供していくことが重要であることを現場に周知徹底する際に活用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
出荷調整
ぶどう
良食味
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