タイトル |
近赤外分光法によるウンシュウミカン成葉の窒素含量測定法 |
担当機関 |
和歌山農総技セ |
研究期間 |
2003~2007 |
研究担当者 |
宮本久美
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発行年度 |
2004 |
要約 |
ウンシュウミカン成葉の生葉の葉表1ケ所に光を照射し、拡散反射してきた近赤外スペクトルを測定する。1600~2300 nm波長域の二次微分吸光度と化学分析により実測した全窒素含量を使ってPLS回帰分析を行い、検量線を作成する。この検量線を用いれば、生葉の近赤外スペクトルから迅速、高精度に窒素含量を測定できる。
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背景・ねらい |
味の良いミカンを連年生産するためには、園地や樹の栄養状態に応じたきめ細かい施肥管理が重要である。現状の化学分析法では多大の労力と時間を要し、多数の園地の時宜にかなった迅速な栄養診断は不可能である。そこで、樹の窒素栄養状態を迅速に診断するため、近赤外分光法によるウンシュウミカンの生葉測定法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- ウンシュウミカン生葉の葉表1ケ所に光を照射し、拡散反射してきた光をPbS検知器で測定し近赤外二次微分吸収スペクトルを得る。
- 水分や遊離アミノ酸による無用なスペクトル変動を避けるため、7月以降の硬化した成葉をキャリブレーション・サンプルに用い、1600~2300nm波長域に限定した二次微分吸光度を使ってPLS回帰分析を行う。
- 得られた検量線には、2050 nm付近、2170 nm付近、2240 nm付近のタンパクに由来するN-H基、アミド基、C-H基の吸収が大きく寄与している(図1)。
- 市販モノクロメーター(Foss NIRSystems 6250型)を用いた測定事例では、1997~2003年未知サンプルに対し、予測誤差の標準偏差(SEP)は0.144~0.167%で、高精度な迅速測定が可能である(図2)。
- 5~6月の未成熟葉では遊離アミノ酸が多く、葉中窒素含量とタンパク含量との相関が低いことから、本方法では測定精度が著しく低い(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 近赤外スペクトルの測定部位は、生葉の葉表で主脈をはずした葉身部1ヶ所とする。
- 葉を測定する携帯型近赤外分光器の開発と実用化によって、本成果を野外での樹ごとの栄養診断に活用できる。
- 成葉における葉中窒素含量とタンパク含量との相関は高く、本測定法による窒素含量の相対比較精度は高く安定している。しかし、両者の関係式は年次や季節によって多少変動し、夏秋季に降雨が異常に多い年次では検量線のバイアス補正が必要な場合もある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
温州みかん
栄養診断
施肥
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