タイトル |
TDR水分計による枝の計測値は測定時の温度と樹皮の厚さの影響を受ける |
担当機関 |
(独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2005~2005 |
研究担当者 |
平岡潔志
村松 昇
瀧下文孝
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発行年度 |
2005 |
要約 |
温度変化の著しい果樹園地において、樹皮の厚さの異なる果樹の枝の体積含水率を携帯型TDR水分計で計測するとき、測定時の温度と計測部にしめる樹皮の厚さの影響が大きいため、計測値を補正して体積含水率を求める必要がある。
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背景・ねらい |
近年、頻発する著しい気象環境変動の下で安定した果実生産を継続するためには、光合成などの生体反応や養水分などの移動に影響を与える樹体内の水分状態を計測・診断して、適切に管理する技術を確立する必要がある。そこで、土壌水分測定用の携帯型TDR水分計を使って、樹体内の水分状態を示す指標である枝の体積含水率をより正確に推定するために、切り枝試料を用いて計測値に影響を与える要因について検討する。
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成果の内容・特徴 |
- センサー用ロッドとして、直径0.81mm、長さ22mmの釘(カリ釘K-1)を2本、切り枝の縦方向3cm間隔に深さ1cmまで打ち込み、携帯型TDR水分計(藤原製作所F35-7250、ロッド長10cm)のセンサーロッドの先端部を釘に接触させて測定する(図1)。
- ポリエチレンの袋に入れ体積含水率の変化を抑えた枝(直径2cm、長さ6cm)と携帯型TDR水分計を恒温器に入れ、温度環境をかえて計測を行うと、計測値と計測時の温度は、温度が高くなるほど計測値(Hz)の値は高くなる2次式で近似される相関関係を示す(図2)。
- .直径1∼8cm、長さ6cm(センサーロッドの間隔の2倍の長さ)の切り枝の体積含水率と計測値の逆数(ミリ秒単位(ms)に換算:以下ms値と示す)の関係式を作成すると、枝の体積含水率とms値は、それぞれの枝で1次式で示される相関関係を示すが、関係式は枝の直径によって異なる(センサーに使用しているCampbell社製CS615のマニュアルでは、ms値と土壌体積含水率の2次関係式を検量線に利用している)(図3)。
- ウンシュウミカン、リンゴ、モモ、ナシの切り枝試料の体積含水率とms値の関係式から算出した体積含水率が40%のときのms値(40%換算ms値)は、それぞれ釘を打った計測部の樹皮の厚さと1次式で示される相関関係を示す(図4)。
- ウンシュウミカン、リンゴ、モモ、ナシ樹太枝(直径6∼8cm)の樹皮の体積含水率は、木部心材(髄を含む)の体積含水率より20%以上高い。また、樹皮の厚さは、それぞれ枝の直径と1次式で示される相関関係を示す(データ省略)。
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成果の活用面・留意点 |
- 果樹園地内に成育する樹体において直径の異なる枝の体積含水率を継続して計測する方法を開発するために活用できる。
- 斜めまたは水平に伸びた枝の樹皮の厚さは、枝の上下で著しく異なるため、樹皮の厚さが平均的な側面に釘を打って計測を行う。
- 細い枝では計測部に髄が含まれるため、樹皮のように髄の体積含水率が木部と著しく異なる枝では、髄の影響について検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
温州みかん
もも
りんご
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