タイトル |
ヒノキチオール水溶性製剤のキュウリ地上部病害に対する発病抑制 |
担当機関 |
大阪食とみどり技セ |
研究期間 |
2003~2004 |
研究担当者 |
岡田清嗣
森田泰弘(大阪有機化学工業)
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発行年度 |
2005 |
要約 |
青森ヒバのおがくずを熱水抽出して得られたヒノキチオールはキュウリの主要病原菌に対して抗菌性を示し、これを大豆油等の天然系素材で製剤化したアクアHN-52はキュウリうどんこ病、褐斑病、炭疽病に対して発病抑制効果を有する。
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キーワード |
ヒノキチオール、抗菌性、キュウリ病害、発病抑制
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背景・ねらい |
近年、有機農産物やエコ農産物など化学合成農薬に依存しない栽培体系の確立において、野菜類の病害虫防除は天然系の素材を用いた防除法の開発が求められている。ヒノキチオールはアスナロ属の青森ヒバに含まれる抗菌性物質であり、広い抗菌性を持つことから化粧品や医薬部外品、食品添加物として認可され、食品の鮮度保持や保存剤としても利用されている。そこで、安全性の高い天然系の抗菌成分を大豆油等で製剤化したアクアHN-52のキュウリの地上部病害に対する発病抑制効果を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 本製剤の組成は、ヒノキチオール2%、ヒバ油5%、界面活性剤として大豆油ケン化物15%、エタノール23%、グリセリン15%、水40%である。
- うどんこ病に対する処理濃度・時期と防除効果について検討した結果、50~100倍希釈液の散布が適切であり(図1)、病原菌接種前より、接種後(5日以内)の散布が効果的である(図2)。なお、25倍希釈ではキュウリ幼苗に薬害を生じる場合がある。
- 本製剤の褐斑病菌に対するPDA培地を用いた菌糸の最少生育阻止濃度(MIC) は62.5ppm(320倍希釈)である(図3)。ヒバ油成分のみを除いた剤でもほぼ同様の生育阻害を示すが、ヒノキチオールおよびヒバ油の両成分を除いた界面活性剤成分のみではMICを得られない。このことから生育抑制の主成分はヒノキチオールである。
- うどんこ病および褐斑病、炭疽病に対するほ場試験の結果、本剤50倍液の7日間隔4回のスケジュール散布は、3病害に登録のあるアゾキシストロビン剤2000倍散布に比較して、うどんこ病と炭疽病に対して初期防除効果は高く、発病後の病勢抑制力はやや低い。また褐斑病に対しては、対照剤よりやや劣るが防除効果があり、薬害は認められない(表1)。
- 天然素材から得られた本剤は、化学合成農薬に比較して効果はやや劣るが、キュウリ主要病害の発生極初期からの散布で発病抑制効果が得られ、安全な防除素材として実用性が期待される。
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成果の活用面・留意点 |
- ヒノキチオールおよびヒバ油は、現在、特定防除資材の審議対象となっているが、この水溶性製剤は農薬取締法に基づく登録がなされていないので、現在のところ、使用は試験研究目的に限られる。
- 本製剤の炭疽病菌に対するPDA培地を用いた菌糸の最少生育阻止濃度(MIC) は、褐斑病菌と同様の結果を示す(データ省略)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
有機農産物
うどんこ病
きゅうり
栽培体系
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炭疽病
農薬
病害虫防除
防除
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