タイトル |
水稲の堆肥連用栽培における施肥窒素の削減 |
担当機関 |
山口農試 |
研究期間 |
1993~2005 |
研究担当者 |
住居丈嗣
徳永哲夫
福田和正
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発行年度 |
2005 |
要約 |
堆肥連用水田土壌中全窒素集積量は、内田の式による予測値にほぼ適合する。この予測値から求められる窒素放出予測量は、連用年数の経過に伴い増大し、水稲の施肥窒素削減栽培試験で求めた最大削減可能量とも概ね一致する。堆肥連用水稲栽培における施肥窒素削減量推定に内田の式は有効である。
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キーワード |
イネ、堆肥連用、施肥窒素削減、内田の式、家畜糞尿堆肥、窒素の集積、窒素の放出
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背景・ねらい |
循環型農業の推進によって、水田への堆肥散布システムの拡大やエコファーマーの増加等で家畜糞堆肥を連用する水田が増加している。連用に伴う地力の高まりに適合した施肥窒素削減量を求め、米の品質・収量安定に資す。
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成果の内容・特徴 |
- 堆肥1.5t/10a連用水田土壌において、窒素含量の実測値と、内田の式から求めた予測値の差は、最大約10%程度であり両者はほぼ一致する(図1左)。堆肥由来窒素放出量は、「投入量-残存量」であるので、内田の式を用い予測できると考えられる(図1右)。
- 堆肥施用の有無から求めた水稲窒素吸収量差(増加量)実測値と、内田の式による堆肥由来窒素放出予測値に水稲の堆肥由来窒素利用率を乗じて求めた予測値を比較すると、日照等気象の影響と思われる年次変動があるものの、牛糞堆肥では予測値よりも0.7~2.7㎏/10a程度少ないが、鶏糞堆肥、豚糞堆肥では予測値の上下で推移するので、概ね窒素放出予測値相当量を施肥窒素から削減できる(図2)。
- 堆肥連用に伴う水稲の施肥窒素削減栽培試験において、慣行区収量の95%以上を削減可能基準として判断すると、牛糞堆肥では、連用3~5年目で基肥半量、11~12年目で基肥半量・穂肥半量程度の削減が可能である。鶏糞堆肥では、連用2~5年目で基肥半量、9~12年目で基肥半量・穂肥半量程度の削減が可能である。豚糞堆肥では、連用2~5年目で基肥半量、9~12年目で基肥全量・穂肥半量程度の削減が可能である(表1)。なお、堆肥連用試験における玄米タンパク含量は、適正に減肥すれば慣行施肥よりも高くならない。
- 堆肥連用に伴う施肥窒素削減量を表1の注5に示した方法で比較すると、内田の式より求めたaと、栽培試験で求めたcとは、ほぼ同じレベルとみなすことができ、内田の式による窒素放出の予測が有用であることを確認した。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、中粒~粗粒の灰色低地土壌で栽培する「ヒノヒカリ」に適用する。
- 長期連用で、窒素放出予測値が必要施肥量を超えても、12年目までは減肥対応で水稲の過繁茂等による減収はなく、堆肥施用中止の必要はない。
- 施肥削減に伴うP、K、Ca等の養分は、施用堆肥の投入量で問題は生じていない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
水田
水稲
施肥
鶏
豚
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