タイトル |
飼料イネ栽培におけるメタン発酵消化液の効率的施用法 |
担当機関 |
滋賀畜技セ |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
小久保信義
駒井佐知子
武久邦彦
水谷 智
柴原藤善(滋賀農技セ)
土井真也(滋賀畜技セ)
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発行年度 |
2005 |
要約 |
飼料イネに対して、メタン発酵消化液を中間追肥・穂肥として流入施用すれば田面水中の窒素濃度低下が速く、施肥効率も向上し、慣行並の乾物生産が確保できる。
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キーワード |
飼料イネ、家畜ふん尿、サイレージ、メタン発酵消化液
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背景・ねらい |
農村地域で発生する畜産排泄物を有機性資源として有効利用するため、バイオガス発電が検討されているが、発電施設から排出されるメタン発酵消化液(以下消化液)の利用法が課題となっている。また、水田を活用した自給飼料の生産拡大の観点から、飼料イネの栽培が推進されており、飼料イネに対する畜産有機性資源の循環利用も期待されている。 このため、牛糞堆肥施用田やレンゲ跡水田において、飼料イネに対する効率的で環境負荷の少ない消化液施用法を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- 供試した消化液は、牛糞尿を主原料としており、曝気処理した牛尿に比べて各成分の濃度が高く、全窒素(T-N)のうち約半分が無機態窒素で、その中でもアンモニア態窒素(NH4- N)の割合が高い。 また、消化液中の肥料三要素の比率は、窒素5、リン酸3、加里11程度である(表1)。
- オガクズ牛糞堆肥施用水田(2t/10a)において、速効性肥料を3回分施した慣行施肥(対照区:基肥+中間追肥+穂肥)に比べ、消化液を窒素成分でそれぞれ約2倍量(実施用量 2.6倍)を水口から流入施用すると、熟期が遅れて乾物重も少なくなり、窒素吸収量は増加するものの施用窒素利用率が低い。リンおよびカリウムの施用量も多くなるが、飼料イネの吸収量は慣行施肥に比べてリンで同程度、 カリウムで1.2倍程度である(表2 一段目)。
- 消化液を窒素成分で慣行施肥のそれぞれ約2倍量施用すると、水稲作付期の窒素収支は収入より支出が小さくなるものの、窒素の流出負荷量(地表排水+浸透水)が約2倍に増加する(図1)。また、CODおよびリンは約2~3倍、カリウムは約4倍にそれぞれ流出負荷量が増加する(データ略)。
- 消化液を水稲移植後1週間目に基肥として流入施用すると、田面水中の窒素濃度の低下が遅いが、中間追肥・穂肥として流入施用すれば濃度低下が速い。窒素濃度の半減期は、基肥で約7日、中間追肥で約2~3日、穂肥で約1~2日である(図2)。
- オガクズ牛糞堆肥を2t/10a施用し、基肥に速効性肥料、中間追肥・穂肥に消化液を対照区の窒素施用量と同程度施用すると、飼料イネの初期生育を確保でき、施用窒素利用率も高く、慣行と同等以上の収量が可能である(表2 二段目)。同施肥体系は、流出負荷の低減の面からも望ましい(図2)。
- レンゲ跡水田において、基肥を省略し、中間追肥・穂肥に消化液を慣行の窒素施用量と同程度施用すると、慣行と同程度の収量とサイレージの安全性・品質が得られる(表2 三、四段目)。
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成果の活用面・留意点 |
- 消化液を施用する前に田面水深を十分下げ、水口から用水と同時に流入施用すると、ほ場に均一に施用できるが、地表排水量が多くなるため、施用前に自然減水に努める。
- 消化液の成分含量は材料および時期によって変動するので、事前に把握した上で施用量を決定する必要がある。また畜種によっては、重金属含量にも注意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
水田
生産拡大
施肥
メタン発酵消化液
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