タイトル |
粗飼料自給率の向上を目指した黒毛和種肥育への飼料イネWCSの活用 |
担当機関 |
滋賀畜技セ |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
谷浩
青木義和
清水信美
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発行年度 |
2006 |
要約 |
肥育前期と後期に飼料イネWCS(ホールクロップサイレージ)(以下「飼料イネWCS」)を、 肥育中期にイナワラを給与することでビタミンA制御肥育ができ、一定の枝肉格付等級が確保されるものの、 全期間飼料イネWCSを給与する方が枝肉重量、収益性ともに良好である。肥育牛への飼料イネWCSの給与は 有効であり、粗飼料自給率向上の一助となる。
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キーワード |
飼料イネWCS、イナワラ、ビタミンA、枝肉格付等級、粗飼料自給率
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背景・ねらい |
肥育中期に血中ビタミンA濃度を低下させると、牛肉の脂肪交雑をはじめとした肉質が向上することが 広く知られ、和牛肥育ではビタミンAを制御した肥育が一般的になっている。一方、飼料イネは、牛の体内で ビタミンAに代謝されるβ-カロテンを豊富に含むことから、和牛肥育農家では利用に慎重な傾向にある。 そこで、飼料イネWCSを活用した有効な肥育生産について検討を行うことで、和牛肥育経営における安全で 安心な自給飼料の利用拡大に資する。
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成果の内容・特徴 |
- 父牛が同じ黒毛和種雌牛6頭を2つの試験区に分け、全期間飼料イネWCSを給与する 「飼料イネ区」と、粗飼料を肥育前期・後期に飼料イネWCS、中期にイナワラを給与する 「イナワラ区」に区分し、濃厚飼料(ビタミンA無添加)は同一とする (表1)。肥育期間は前期16週間、中期44週間、後期32週間とする。 また、粗飼料中のβ-カロテン量は表2に示すとおりである。
- 肥育前期に原物8kg/日の飼料イネWCSを給与した場合でも、血中ビタミンA濃度は低下する。 ただし、中期に飼料イネWCSを給与した場合、血中ビタミンA濃度が制御肥育の目安となる 50IU/dl以下には低下しない。ビタミンA制御肥育をおこなうためには、中期に給与粗飼料をイナワラに 変更する必要がある(図1)。
- 発育は、全期間飼料イネWCSを給与した方が良好である(図2)。
- 枝肉重量は、飼料イネWCSを全期間給与した方が優れているが、歩留まり、BMSNo.、脂肪交雑等級は 中期にイナワラを給与した方が優れている(表3)。
- 枝肉単価は、肥育中期にイナワラを給与した方が高いが、枝肉販売額は全期間飼料イネWCSを給与 した方が上回る。
- 以上により、肉質の点では、ビタミンA制御肥育が可能な肥育中期のイナワラ給与の方が 優れているが、発育と収益性では、全期間飼料イネWCSを給与する方が優れている。
- 採食量の低下や四肢の浮腫等のビタミンA欠乏による症状が認められたときは、速やかに ビタミンAを給与する。
- 成果の活用にあたっては、実用規模での実証も必要である。
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成果の活用面・留意点 |
- 採食量の低下や四肢の浮腫等のビタミンA欠乏による症状が認められたときは、速やかに ビタミンAを給与する。
- 成果の活用にあたっては、実用規模での実証も必要である。
- 今後さらに、発育と肉質の両面の向上のため、肥育中期にイナワラと飼料イネWCSの適正な 給与比率を検討することで、飼料イネWCSの通年給与や1頭あたりの給与量の増加により、一層の 利用拡大が図れる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
経営管理
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