タイトル |
酒造原料用水稲品種「さぬきよいまい」の育成 |
担当機関 |
香川農試 |
研究期間 |
1995~2005 |
研究担当者 |
河田和利
河野謙司(香川県酒造協同組合)
三木哲弘
村上てるみ
多田伸司
中井昌憲(同左)
藤田究
楠谷彰人(香川大)吉本康(香川県農協)
|
発行年度 |
2007 |
要約 |
香川県の地酒用酒米品種として「さぬきよいまい」を育成した。「さぬきよいまい」は本県の奨励品種である「オオセト」に比べて、成熟期が12日程度遅く、多収で千粒重が重く、タンパク質含有率が低く、酒造適性に優れている。
|
キーワード |
イネ、さぬきよいまい、酒米、酒造適性
|
背景・ねらい |
香川県では1979年に奨励品種に採用した「オオセト」を酒米として主に使ってきたが、香川県にしかないオリジナル品種を使ってさぬきの地酒を造りたい、という香川県酒造協同組合の要望が出されるようになった。そこで、香川大学農学部で育種を開始し、その後、香川県農業協同組合、香川県が協力し、産学官の4者が共同でさぬきの地酒用品種の開発に取り組んだ。
|
成果の内容・特徴 |
- 育成経過
1995年に香川大学農学部において、「オオセト」を母、「山田錦」を父として交配を行い、集団育種法により育成した。2003年のF9世代以降は系統を香川県農業試験場に移管し、系統選抜を行うとともに、奨励品種決定調査等を実施し、その成績が良好であったので、「さぬきよいまい」と命名し、2006年3月に品種登録を出願した。出願時の世代はF11であった。 - 品種特性
「オオセト」と比較した特性は以下のとおりである(表1、2)。 1)出穂期が9日程度、成熟期が12日程度遅い“中生の晩”である。 2)分げつ発生が旺盛で穂数が多く、草型は“穂数型”である。 3)稈長は長く、稈は細く、稈質が柔らかいため、耐倒伏性は“中”である。 4)いもち病真性抵抗性遺伝子Pita-2を持つと推定され、通常自然菌による葉いもち抵抗性検定では発病が認められない。 5)多収で、玄米の外観品質はほぼ同程度である。通常は心白の発現はない。 6)玄米千粒重(粒厚1.8mm以上)は3g程度重く、「山田錦」よりやや重い極大粒種である。 7)穂発芽しやすく、脱粒しやすい。 8)同一施肥条件下ではタンパク質含有率が低い。 - 酒造適性
独立行政法人酒類総合研究所において、2003及び2004年産米を供試して麹米、酒母米、掛米とも同一品種での仕込みで醸造試験を行った結果、清酒の官能評価が良く、酒造原料米として適していることを確認した。また、香川県酒造協同組合における官能評価では香りが良く、すっきりとしてまろやかな酒質であると評価され、総合点が高かった(表3)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 窒素施肥量が多いと、葉が垂れて受光態勢が悪くなり、倒伏しやすくなる。また玄米のタンパク質含有率が上がって酒造適性が劣るので、総窒素施用量は10a当り6kgを基準とする。
- 大粒のため、気象条件や土壌水分によっては胴割米が発生することがあるので、早期に落水しない。
- 成熟期を過ぎると脱粒しやすくなるので、適期に収穫を行う。
- 本品種の栽培および種子の流通は香川県内に留める。
|
図表1 |
|
カテゴリ |
育種
いもち病
酒造好適米
水稲
施肥
抵抗性遺伝子
抵抗性検定
品種
|