高糖度トマトの養液栽培における海洋深層水の利用技術

タイトル 高糖度トマトの養液栽培における海洋深層水の利用技術
担当機関 高知農技セ
研究期間 2004~2006
研究担当者 細川卓也
小松秀雄
佃 浩輔
発行年度 2007
要約 有機質培地耕における高糖度トマト栽培では、培養液に海洋深層水を生育ステージに応じて4%→2%→0%と添加することで、高糖度果実収量が10a当たり10t得られる。上段果房で発生の著しい尻腐れ果に対しては、開花約10~21日後の間にCa剤の果房散布を1~2回行うと軽減できる。
キーワード 高糖度トマト、養液栽培、海洋深層水、添加濃度、尻腐れ果
背景・ねらい 海洋深層水(以下、深層水)は貴重な資源の一つであり、農業分野での利用手法の提案や農産物の品質、内容成分に及ぼす影響の解明が強く要望されている。また、近年、トマトでは食味や栄養価などの内容的な品質への関心が高まっており、高糖度トマトの消費が拡大している。そこで、有機培地を用いた養液栽培による高糖度トマト栽培での深層水の効果的な利用方法と、高糖度トマト栽培で発生の多い尻腐れ果の軽減技術を検討し、安定生産技術を確立する。
成果の内容・特徴
  1. 深層水の培養液への添加濃度は、第2花房開花期~第6花房開花期(10月末~12月)は4%(ECで2.4dS/m上昇)、第6花房開花期~第11花房開花期(1~2月)は2%(同1.2dS/m上昇)とし、第11花房開花期(3月)以降は無添加とすることで、無添加に比べて高糖度果実(Brixで8%以上)収量は増加する (表1)。
  2. 尻腐れ果の発生は培養液への深層水添加で助長され(データ略)、上段果房(開花期が3月以降)で著しい(図1)。尻腐れ果対策としてはCa剤の葉面散布より果房散布が効果的で(データ略)、これらの果房に対しては、開花約10~21日後(果径が2~3cm)の時期にCa剤(CaCl2;Caで0.4%)を1~2回、果房散布することで軽減できる(図2)。
  3. 深層水の培養液への添加により、無添加に比べてビタミンC含量が1、2月に1.3~1.4倍、糖含量が1、2月に1.1倍、リコペン含量が1月に1.1倍に増加する(表2)。
  4. 深層水の培養液への添加で平均果実糖度は高まり、給液量が多い場合でも糖度は低下しにくい(データ略)。
成果の活用面・留意点
  1. 日射比例給液制御による高糖度トマトの養液栽培(かけ流し式、培地はヤシガラ・バーク堆肥混合培地)において「桃太郎ファイト」を9月中旬に定植し、ベッド間隔180cm、株間は12cm(4,600株/10a)で主枝1本のつる下げ誘引仕立てで6月末まで栽培して得られた結果である。
  2. 高知県室戸岬沖水深320mおよび340mから混合採取した海洋深層水を用いた。
  3. 基本培養液は山崎トマト処方に準じて調整し、濃度は定植~11月末および4月以降は1.5単位(EC:1.7dS/m)、12月~3月末には2.0単位(EC:2.3ds/m)とした。
  4. ストレス付与開始(第2花房開花期)後は日射比例給液制御とし、第2果房下の葉を摘除する(12月中旬頃)までは積算日射量1.71MJ/m2ごと、それ以降には1.93MJ/m2ごと(屋外日射量基準)に1回1株当たり100mLを給液した。
  5. 深層水添加と表層海水、NaCl添加との比較(ECを同値)では高糖度果実収量や内容成分に差は認められず(データ略)、糖度上昇や内容成分の増加は培養液中の全溶質濃度の上昇による吸水抑制によるものと考えられる。
図表1 220410-1.jpg
図表2 220410-2.jpg
図表3 220410-3.jpg
図表4 220410-4.jpg
カテゴリ 栽培技術 トマト 養液栽培 良食味

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