タイトル |
ホウレンソウケナガコナダニの移動生態に基づく効果的な薬剤散布時期 |
担当機関 |
奈良農総セ |
研究期間 |
2004~2005 |
研究担当者 |
松村美小夜
|
発行年度 |
2007 |
要約 |
春期及び秋期の施設栽培ホウレンソウ(播種から収穫までの期間が35~40日程度)におけるホウレンソウケナガコナダニに対する薬剤散布は、2葉期と4~6葉期に行うと効果が高い。
|
キーワード |
ホウレンソウ、コナダニ類、移動、薬剤、化学的防除
|
背景・ねらい |
近年、奈良県中山間地域の施設栽培ホウレンソウで、春期及び秋期にホウレンソウケナガコナダニ(以下、コナダニと略す)による被害が多発し、問題となっている。栽培現場では薬剤散布による防除が実施されているが、薬剤散布適期の根拠が明らかでなかったため、個々の生産者の散布時期がばらつき、防除効果が不安定である。 そこで、圃場での生息場所別の発生推移を調査し、効果の高い薬剤散布時期を解明する。
|
成果の内容・特徴 |
- ホウレンソウ栽培施設内の土壌では、深さ1cmまでの表層土でコナダニが多く確認されるが、発芽期には深さ1~5cmの下層土にもコナダニが比較的多く見られる。4~6葉期には表層土のコナダニ密度が増加し、株への寄生がわずかに認められる。8~10葉期には引き続き表層土のコナダニ密度が高く、寄生株率が高まり、展開葉への被害が認められる(図1)。4~10葉期における表層土からホウレンソウへのコナダニの移動を抑制することが防除上重要である。
- 薬剤散布は、4~10葉期における表層土でのコナダニの増加やホウレンソウへのコナダニの移動を未然に防止するため、2葉期と4~6葉期に行うとよい。特に、薬液のかかりやすい表層土にコナダニが多く確認され、被害は未発生である4~6葉期が重要である。一方、発芽期は薬液のかかりにくい下層土にコナダニが多く、8葉期以降は被害が発生して手遅れになる。
- ダイアジノン・DDVP乳剤を2葉期と4~6葉期に2回散布すると、4~10葉期の表層土に生息するコナダニ個体数を抑制し、多発生条件でも防除効果が高い(図2、3)。
- 以上のことから、コナダニに対して安定した防除効果を得るには、2葉期と4~6葉期の2回散布が適当である。
|
成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、成虫への接触毒性を主とする即効的な薬剤についてのものである。IGR剤等の遅効的な剤や、3週間以上の残効を有する剤については検討を要する。
- 本成果は、奈良県内の灰色低地土における慣行管理(耕起栽培で、4葉期頃まで十分量潅水後、収穫期まで潅水を控える)下でのものである。
- 表層土のコナダニ密度を抑制するために、十分量を散布する。
- 未熟な有機物を多く土壌に投入していると、コナダニが増殖しやすいうえ、下層土にも分布しやすくなる恐れがあり、薬剤だけでは抑制できない場合があるので注意する。
- DDVP乳剤のように感受性が高くても残効が短い薬剤は、ダイアジノン・DDVP乳剤ほどの効果は期待できない(表1、図2、3)。また、ダイアジノン・DDVP乳剤のホウレンソウでの使用基準は収穫21日前までで、春期や初秋期には2葉期頃までしか使用できないので注意する。なお、DDVP原体は2008年9月に製造が中止される。
- DCIP粒剤等のコナダニに効果がある粒剤の土壌混和処理と組み合わせると、さらに安定した効果が期待できる。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
図表4 |
|
カテゴリ |
病害虫
施設栽培
中山間地域
播種
防除
ほうれんそう
ホウレンソウケナガコナダニ
薬剤
|