選択培地によるイチゴ炭疽病菌の潜在感染株および培養土における動態解析

タイトル 選択培地によるイチゴ炭疽病菌の潜在感染株および培養土における動態解析
担当機関 奈良農総セ
研究期間 2006~2007
研究担当者 岡山健夫
西崎仁博
平山喜彦
発行年度 2007
要約 ベノミル剤耐性菌を対象に作製した選択培地により潜在感染株や鉢土から炭疽病菌が分離できる。潜在感染株は外側葉位の小葉や葉柄、葉柄基部から炭疽病菌が高率に分離され、内側葉位になるほど低下する。炭疽病菌の分生子は培養土で生存し、感染源となる。
キーワード イチゴ、炭疽病、Glomerella cingulata、選択培地、伝染源
背景・ねらい イチゴ炭疽病菌は外観上健全に見えるクラウンで越冬することが知られている。本菌の分離は主にPSA培地を用い、ランナーや葉、葉柄から行われている。しかし、選択性が低いため新鮮な組織からの分離に限られ、潜在感染部位や伝染源を網羅的に探索することができない。そこで、ベノミル耐性の炭疽病菌(G.cingulata)を対象に選択培地を作製し、これを用いて菌の生息部位および伝染経路を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 選択培地は、PSA培地にベノミル50ppm、トリフルミゾール30ppm、オキシガル100ppm、ストレプトマイシン硫酸塩50ppmを添加して作製する。
  2. この選択培地はストレプトマイシン加用PSA培地よりも選択性が高く、潜在感染株および発病枯死株の小葉、葉柄、クラウン近傍の葉柄基部から高率に炭疽病菌が分離でき、クラウン、鉢土からも炭疽病菌が分離できる(表1、図2)。
  3. 10月以降4月まで外観上健全に見える潜在感染状態の小葉、葉柄、葉柄基部から炭疽病菌が高率に分離される。葉位別の分離頻度は、外側葉位の小葉や葉柄、葉柄基部が高く、内側の葉位になるほど低下するが、新しい小葉や葉柄、葉柄基部からも分離される。時期別の分離頻度は、年内が高く、越冬後は低下する(図1)。
  4. 育苗用土として用いられる培養土に分生子を接種した後、本選択培地を用いて分離すると、ピートモス・バーミキュライト混合培養土とオガクズは49日後まで検出される。一方、水田土壌は接種21日後まで、砂土は126日後まで検出される(図3)。
  5. 発病株に隣接して置いた鉢土は、頭上灌水によって飛散した分生子で汚染し、この鉢土にイチゴ子苗を植え付けると発病する。発病株は、葉や葉柄に黒色汚斑症状が見られないが、萎凋枯死し、根やクラウンから炭疽病菌が分離される。
成果の活用面・留意点
  1. 本選択培地は炭疽病菌の動態を調査するために作製したものであり、植物体からの検出に適する。選択培地上の培養菌そうは鮭肉色に着色しやすいので識別が容易である。現地ほ場における感性菌の調査あるいは土壌からの分離、定量には、Colletotrichum acutatumの分離に使われている改変Mathur培地(Freemanら、1997)を用いる。
  2. 分離培養前には常法の表面殺菌が必要であり、培養期間は28℃、5日間で識別が可能である。
  3. 培養菌そう上の分生子を検鏡して本菌であることを確認するが、形態が酷似する非病原菌が分離されることがある。
図表1 220463-1.jpg
図表2 220463-2.jpg
図表3 220463-3.jpg
カテゴリ 育苗 いちご 水田 耐性菌 炭疽病

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる