タイトル |
蒸気散水法による連作障害畑の土壌リフレッシュ技術 |
担当機関 |
京都農総研 |
研究期間 |
2005~2007 |
研究担当者 |
松本静治
吉川正巳(京都農資セ)
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発行年度 |
2007 |
要約 |
蒸気散水処理により盛夏期ホウレンソウ栽培で発芽率が向上し、収量が増加する。土壌伝染性病害に対して高い防除効果を示し、雑草の発生も抑制する。土壌表層の養分の多くは一時的に下層部に移動するが、移動は系内にとどまる。
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背景・ねらい |
京都府内の施設園芸産地では、土壌養分の過剰な蓄積や土壌病害の発生により生産性が低下している圃場が多い。そこで、蒸気散水法により土壌環境を改善する技術を実用化し、京都府内野菜産地に安全・安心な臭化メチル代替技術を提供する。
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成果の内容・特徴 |
- パイプハウス内圃場を耕耘後1.2 m幅でうね立てし、うね中央部に蒸気放出用ホース、その両側に耐熱性散水チューブを設置してうね全体を耐熱性ビニルシートで覆い、蒸気消毒器で蒸気を約2時間注入した後、0.3 Lmin-1m-2で約2時間散水(総散水量30 Lm-2)する処理(蒸気散水法、以下処理と略す)を行うと、土壌の深部で蒸気の単独処理と比較してより高い昇温効果が得られる(図1)。地温は2日後には低下するため、再耕耘することなく播種・定植作業が可能になる。
- 処理により表層のECは一時的に低下するが、土壌の乾燥に伴って再び上昇する。これは、硝酸態窒素と交換性塩基類の移動によるものと考えられるが、下層部の土壌養分に大きな変化はなく、養分の移動は系内にとどまる(図2)。
- 処理後の盛夏期のホウレンソウ栽培では、無処理と比較して土壌養分の高低にかかわらず発芽率は向上する。生育期間中に萎凋・枯死する株が減少することと、生育量(1株当たりの新鮮重)が増加することにより収量が増加する。また、雑草の発生も抑制する。増収効果と雑草発生抑制効果は処理後の第2作においても認められる(表1)。
- ホウレンソウの立枯性病害、トウガラシ類の疫病の発病圃場において、定植前に処理を行うことにより栽培期間中の発病を抑制する。
- 馬糞を原料とする堆肥を処理前に施用することにより、土壌中の蛍光性Pseudomonas属細菌の菌密度が増加する(処理前、処理1日後、処理13日後、処理13日後・堆肥無施用の菌密度はそれぞれ2.8、0.0、4.6、3.4 log cfu g-1 soil)。
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成果の活用面・留意点 |
- 京都府内の灰色低地土における結果であり、土壌条件により効果は異なる。
- 元肥は蒸気散水処理前に施用するが、高温に弱い被覆肥料等は利用できない。
- 処理によりアンモニウム態窒素は一時的に増加するが、これは土壌中の硝化細菌数の減少(データ省略)により土壌の硝化能が低下したことによるものと考えられる。しかし、亜硝酸態窒素は増加しない。
- 処理により土壌中の交換性Mn含量が増加する(処理前0.8mg kg-1、処理後13.9mg kg-1)。本試験の範囲内では生育障害は認められないが、栽培品目によっては過剰障害を起こす恐れがあるので、予め分析を行う必要がある。
- トマト等、ナス科植物の青枯病に対しては十分な防除効果が得られない場合がある。
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図表1 |
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カテゴリ |
肥料
病害虫
青枯れ病
馬
乾燥
栽培技術
雑草
施設園芸
とうがらし
土壌環境
トマト
なす
播種
防除
ほうれんそう
連作障害
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