環境保全型稲作技術の面的な取り組みによる流出負荷低減効果の定量的評価

タイトル 環境保全型稲作技術の面的な取り組みによる流出負荷低減効果の定量的評価
担当機関 滋賀農技セ
研究期間 2004~2006
研究担当者 蓮川博之
駒井佐知子
水谷 智
大林博幸
須戸 幹(滋賀県大)
柴原藤善
発行年度 2007
要約 化学肥料・化学合成農薬の使用削減と適正な水管理を組み合わせた環境保全型稲作技術の面的な取り組みにより、慣行栽培と同程度の収量・品質を確保しつつ、水稲作付期に安定した流出負荷低減効果が得られ、年間を通した養分(窒素)収支も改善できる。
背景・ねらい 滋賀県では全国に先駆け2004年に環境農業直接支払制度を創設し、2007年度からは国制度として「農地・水・環境保全向上対策」が開始されており、水稲を中心に環境保全型農業の取り組み面積が増加している(2007年:10,367ha(うち水稲8,893ha、栽培面積の26%))。
このような中、近畿地域および滋賀県農業の主体である水稲栽培について、環境保全型農業の取組効果の定量評価が緊急の課題となっている。そこで、集落営農によって一体的に環境保全型稲作技術に取り組むモデル地域(現地の精密調査ほ場および水田群)において、水稲作付期の栄養塩類等の流出負荷低減効果を複数年にわたって定量評価するとともに、水稲非作付期の土壌管理法も含めた年間の流出負荷と養分収支の改善効果を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 実証区では、県独自の特別栽培米栽培基準(環境こだわり農産物栽培基準)に基づき、化学肥料(N成分量)および化学合成農薬(延べ成分数)の使用量を通常(慣行栽培:対照区)の5割以下に削減することに加え、農業排水を適正に管理(濁水流出防止等)する栽培を行っている。また、非作付期(2005年水稲収穫後~2006年作付前)には、収穫後の耕起時期を約40日遅延し、土壌診断に基づき土づくり肥料(リン酸質)を節減している(表1)。
  2. 水稲作付期の栄養塩類等の流出負荷量は、実証区では精密調査ほ場において2か年とも安定した負荷低減効果(全窒素(T-N)46~48%、全りん(T-P)14~28%、懸濁物質(SS)48~50%)が得られ、水稲の収量・品質も2か年を通して対照区と同水準を確保できる。また、水田群でも同様の負荷低減効果が認められ、窒素の差引排出負荷量(流出-流入)は精密調査ほ場と同様にマイナスの浄化型となる(表2、一部データ略)。
  3. 農薬成分については、実証区では化学合成農薬の使用成分量が少なく、流出量も60%以上の削減効果が認められる(表2)。
  4. 非作付期の栄養塩類等の流出負荷量は、実証区(精密調査ほ場)でやや低減する傾向にあり、年間の流出負荷量(作付期(2か年平均値)+非作付期(2005年))についても実証区では低減効果が認められ、差引排出負荷量も同様に低減する(図1、一部データ略)。
  5. 年間の窒素収支(施肥+流入-籾持出し-流出)をみると、実証区(精密調査ほ場)では収支のバランスがとれ、肥料と水が効率的に利用されていると評価される(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、湖辺平坦地の半湿田での結果であるが、乾田でも同様の効果が認められており、西南暖地の沖積土水田および閉鎖性水域の環境農業の評価に適用可能である。
  2. 調査した両区(精密調査ほ場)のT-Nの流出負荷量は、土壌タイプが細粒グライ土で水持ちが良く、浸透負荷量が少なく、さらに被覆複合肥料の側条施肥や集落営農による栽培管理の効率化により、近年の当センターの調査結果(27事例)の中で低いレベルにある。
図表1 220482-1.jpg
図表2 220482-2.jpg
図表3 220482-3.jpg
図表4 220482-4.jpg
カテゴリ 土づくり 肥料 病害虫 栽培技術 水田 水稲 施肥 土壌診断 農薬 水管理

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