中山間地域の集落営農法人における麦・大豆作の意義と導入条件

タイトル 中山間地域の集落営農法人における麦・大豆作の意義と導入条件
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2006~2007
研究担当者 棚田光雄 
発行年度 2007
要約 中山間地域の集落営農法人において麦・大豆作は主力となる構成員の所得確保に寄与する。麦・大豆作の導入には低コスト化(10%程度)を可能とする新技術の採用を基礎的条件とし、併せて1.5~1.6倍の増収を実現する等、総合的な対策を講じる必要がある。
背景・ねらい 中山間地域において限定的ではあるものの集落営農法人による麦・大豆作での転作対応(稲・麦・大豆の2年3作体系となる)が生まれている。一方、品目横断的経営安定対策(新制度)が2007年度から開始され、また、水田輪作を支える新技術の実証試験が進められている。そこで、中山間地域での水田輪作営農の展開可能性を探るため、新制度下における麦・大豆作の意義と導入条件について技術目標を提示する観点から検討する。
成果の内容・特徴
  1. 対象事例としたT法人(経営面積42ha、うち水稲30ha、大麦11ha、大豆11ha)では、麦・大豆作において小作料負担の軽減(作物当たり1/2負担)や機械の負担面積の拡大による費用低減等を考慮しても、現行収量(大麦220kg/10a、大豆150kg/10a)の下で、大麦作、大豆作ともに8~9千円/10aの赤字が発生する(表1)。また、大麦あるいは大豆一作による転作対応を試算すると、3~4千円/10aの黒字が計上できることから、麦・大豆作は麦や大豆一作での対応に比べて収益面での優位性が認められない現状にある。
  2. T法人における大麦作と大豆作では、作業を中心的に実施する一部の主力構成員に対して、還元される労賃の多くが配分される。主力構成員は1人当たりでみると、大麦作あるいは大豆作によって平均13~17万円の労賃を得ることになり、麦・大豆作では稲作を含む労賃配当が麦あるいは大豆の一作に比べて2~3割増加する(表2)。麦や大豆での転作対応は主力構成員の所得確保に寄与し、麦・大豆作はその意義をより高める。
  3. 図1は、麦と大豆での転作対応について、一作と二作の場合の収益を比較している。麦・大豆作により大豆作並み収益を得るためには、前作大麦の収量を420kg/10a(ア・イの交点)、大麦作並み収益を得るためには、麦跡大豆の収量を300kg/10a弱(エ・オの交点)まで引き上げる必要がある。この収支均衡のための収量は、T法人の営農計画収量(大麦300kg/10a、大豆200kg/10a)を大幅に上回る。新制度では過去の生産実績に基づく支払(「緑ゲタ」)が固定収入となり経営安定化機能をもつなかで、収支改善に及ぼす増収効果が制約されることが影響し、高い収量水準が求められることになる。
  4. コストを10%程度削減する新技術としての不耕起栽培を採用することにより、収益均衡のための収量は大麦作で320kg/10a(現行の1.5倍、ア・ウの交点)、大豆作で240kg/10a強(現行の1.6倍、エ・カの交点)まで低下し、さらに、大豆作での固定費節減対策を組み合わせることで(エ・キの交点、180kg/10a強)、麦・大豆作導入の可能性が見いだせる。中山間地域での麦・大豆作の導入において、省力・低コスト化の新技術を基礎条件として位置づけ、収量向上等と併せた総合的な対策を講じる必要がある。
成果の活用面・留意点
  1. 中山間地域での麦・大豆作の導入に当たって、収量目標や収支改善の方向・方策を示すものとして活用できる。
  2. 広島県の中山間地域において麦・大豆作の成立を目指す希少事例として存在している、兼業・高齢農家による集落営農法人の実態と実績に基づいている。
図表1 220492-1.gif
カテゴリ 大麦 経営管理 コスト 収量向上 水田 水稲 大豆 中山間地域 低コスト 不耕起栽培 輪作

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