タイトル |
ため池の水質浄化を目的としたホテイアオイの植栽・回収方法および利用方法 |
担当機関 |
奈良農総セ |
研究期間 |
2005~2007 |
研究担当者 |
小野良允
土井正彦
平浩一郎
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発行年度 |
2008 |
要約 |
ため池の水質浄化を目的としてホテイアオイを植栽する場合、フラワーネットを利用することにより、系外への流出を防止し、回収作業を容易に行うことができる。ホテイアオイの水中窒素固定能力は、103kgN/haであり、これを水田に施用した場合の窒素無機化率は15%である。
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キーワード |
ため池、水質浄化、ホテイアオイ、窒素固定、窒素無機化率
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背景・ねらい |
奈良県内のため池の多くは、生活雑排水の混入等によって水質が富栄養化し問題となっている。ホテイアオイ等の水生植物は、水中の栄養塩類(窒素等)を吸収して生長することから、水質浄化を行うことができるが、植栽・回収に多大の労力を要することから実用化が難しい。そこで、フラワーネット(10cm目合い)に苗を固定することにより植栽・回収を容易に行う方法を検証する。また、水中から吸収固定した窒素を有効に利用するため、水田に施用した場合の窒素無機化率を測定する。
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成果の内容・特徴 |
- 検証した植栽方法は、10cm目合いのフラワーネット(幅1.5m)を使用し、ホテイアオイを1平方メートル当たり1株になるように投げ込み、3m間隔で水面に展帳する方法である。回収時は、ホースリールを改造した巻き取り装置でフラワーネットを巻き取りながら、ネットからホテイアオイを手ではずす方法で回収する(図1)。
- 回収に要する延べ作業時間は、75時間である。この場合、機械等の動力は用いていない(表1)。
- 回収したホテイアオイの成分量は、乾物当たりN:2.09%、P:0.24%、K:5.17%である。窒素固定量は、103kgN/haである(表1)。この時のため池に流入する水に含まれる窒素は、全窒素で1.5~3mg/L程度である。
- 回収したホテイアオイは、有姿のまま水田に施用してトラクターで鋤込む。ホテイアオイを鋤込んだ水田で、翌年水稲を植栽した場合のホテイアオイの窒素無機化率は、インキュベーション試験の結果から、湛水後19日で最高15%に達した後、やや低下する(図2)。
- ホテイアオイを施用した水田で施肥窒素を2.7kg/10a減肥しても、慣行施肥(施肥窒素9.0kg/10a)と比較して減収しない(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- ホテイアオイは、冬季の気温が高い地域では、越冬して問題となるので、自然越冬できない地域に限定して利用する。
- 本試験においてホテイアオイは、5月23日に植栽し11月1日に回収した。
- 本技術は、イニシャルコストとしてフラワーネットの費用が必要であるが、ランニングコストは不要であり、低コスト水質浄化技術である。
- ホテイアオイを水田に施用した場合、窒素と同時に炭素も投入され、湛水開始までの残存率が40%なので土壌炭素を富化することができ、土づくり資材としても有効である。
- ホテイアオイのインキュベーションは、細断した生の試料をリターバッグに入れて施用時から耕起まで水田に埋設したものを取り出し、30℃で湛水静置培養した。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
土づくり
コスト
水田
施肥
低コスト
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